第十九話 「再会のシャワールーム」
第十九話
「再会の
 シャワールーム」





6月中は時雨も咲也も『再教育』が続き、7月になってからは二ヶ月間も接客をキャンセルしてきたので、連日のように予約客が入り時雨も咲也も接客に追われていた。
咲也が休みでも時雨には『泊まり』のお客様が入っていたり、またその逆もあったりで、朝の食堂で少し会話を交わす程度でゆっくりと過ごすことができないまま季節は夏に変わっていた。

「あっつぅ……」
時雨はややくたびれた表情でシャワールームに入る。
遊廓の中は空調が効いているが、接客ともなると夏の暑さが身にしみる。
汗や精液で濡れたシャツやズボンを脱ぎ捨てれば、べたつく身体をシャワーで洗い流していく。

「はぁ…」
暑いといつも以上に疲れた感じがして、水分補給用にペットボトルのミネラルウォーターをシャワーに持ち込み、ぬるめのシャワーをゆっくり浴びようと咲也がシャワールームに入ってくる。
今日の来客予定はもうなく久しぶりにゆっくり夜を過ごせそうだと思いながら着物を脱いでクリーニングボックスに入れようとすると、時雨の物らしいシャツに気づく。
「…時雨? 居る…?」
シャワールームの中から水音が聞こえる個室に声をかける。

しばらくシャワーから流れるぬるま湯に心地よさを感じていると、外から聞き慣れた声が聞こえてくる。
「ん、いるよ…咲也」
顔を綻ばせて、そこにいるであろう咲也に声をかけて。

「ん… 僕 今日はもう『あがり』なんだけど… 時雨は? この後 まだ予約…ある?」
売れっ子の時雨とは今月に入ってなかなか時間が合わず、『泊まり』の客もあったりで顔さえ合わせない日もあったので、ほんのつかの間での再会も嬉しそうにする。

嬉しそうな咲也の声がドア越しから聞こえてくる。
時雨を気遣うように問いかける咲也に、ゆっくりとドアを開けて顔をだす。
「クス…そうだねぇ、予約なら入ってるね…うん」
と一瞬間をおいて、
「咲也との予約がね」
と、ニシシと笑顔を見せて

一瞬「予約が入ってる」という言葉に表情を曇らせるが
「時雨の意地悪…」
と、頬を染めて開いたドアから覗く時雨の頭に抱きつくように腕を伸ばす。

咲也の反応にクスクスと楽しみながら、咲也の手を引き寄せてぎゅっと抱き寄せる。
「久しぶりだし、前にもこういうことがあったね」
と、咲也の髪を撫でる。

「ん… そだね… まだ僕が来たばっかりの頃… もう懐かしいね」
思い出して微笑み、抱き寄せてくれた時雨の腕に身を任せ二人でシャワーのお湯にあたる。
接客でベタついていた身体を洗い流すとスベスベとした時雨の肌が心地よい。

「あの頃は、まだナカを洗うのも一苦労だったっけ?」
くすりと思い出し笑いを浮かべて、すり寄ってくる咲也の白い肌をさする。
なめらかな感触が、胸を梳くように感じられる。
「んで…ここで我慢できない咲也とヤっちゃったしね」
ぎゅっと咲也を抱きしめ。

「うぅ… 恥ずかしいから言わないでよ…」
時雨の言葉に顔を赤らめ俯き。
それでもぎゅうっと抱きしめられればお互いの鼓動が聞こえるようで。
「時雨… ちゅ」
抱きしめられたまま首筋に顔を埋め肌に吸いつく。

「咲也の照れてる顔、かわいくてさ」
と、咲也の顔をまじまじと見つめる。
首筋に吸い付いてくる咲也に応じてこちらも細い首筋に口づけて、ちゅ…ちゅ、と音をたてる。

「ん… ちゅぅ…ちゅ」
時雨の与えてくれる快感を返すように吸い付いていると、だんだんと激しくなり、歯止めが効かなくなっていく。
「んぁ… 時雨ぇ ちゅく」
甘い声を耳元に零しながら首筋を吸い上げる。

徐々に理性が薄れていっているのか、首筋への愛撫が激しくなってくる。
ゾクゾクとこみ上げる淡い快感。
「ん…あ…咲也ぁ…ふあ…」
思わず声が漏れて。
「咲也…ここでまた、ヤっちゃう?」

「はぁ… 時雨… ちゅ これ以上やったら痕になっちゃう…」
と、時雨の肩をそっと押して離れ。
「シたいけど… 今日は『誰か来ちゃうんじゃないか』とか…心配しながら…シたくないから… 身体洗ったら…部屋で…シたい」
そう告げるとそっと時雨の腕から抜け出て、髪や身体を手早く洗っていく。

「ん、そうだね。ちゃっちゃと洗って僕の部屋に行こうか」
と、とりあえずこの場を収めて、さっと髪や身体を洗っていく。
シャワールームから上がり、濡れた体を拭いて咲也と共に、自分の部屋へと歩んでいく。

「ん… 時雨の部屋も久しぶりだね… ここのとこずっと『泊まり』のお客様がいたから 行けなかったし…」
シャワーで全身の泡を流しながら微笑み。
シャワーから出て身体を拭いて
「また後で来ることになりそう」
と、思いながらシャワールームを後にする。

「そか、結構咲也も忙しくなってきたんだねぇ。ほとんど会えなかったから… …まあ心配じゃなかったといえば嘘だけど」
少し照れくさそうに呟いているうちに、時雨の部屋に着いて、どうぞと咲也を招き入れる。

「ん… 5月と6月にずっと接客してなかったから…時雨もキャンセルしちゃったお客様がいっぱいでしょ? 今日みたいに『あがり』が合う日がなかったからね… 久しぶりで…嬉しい」
時雨の部屋に入るとベッドにポスンと座り。

「そだね、ほんと絶え間なく接客してた気がするよ…
 こうやって二人きりなのも…
 1ヶ月ぶりなんだ。
 あ、なんか飲む?
 甘いのしかないけど」
と、咲也に問いかけてみる。

「うん 僕も。
 別荘から帰ってきてからずーっと『再教育』で…
 終わったと思ったら接客に追われて…
 忙しいから…あんまり考える暇なかったけど…
 時雨に逢えないなぁって…
 寂しかった…」
ぽつりぽつりと呟いて、飲み物を勧めてくれる時雨に自分はミネラルウォーター持ってきてるからと、ペットボトルを見せて。

「そっか、『再教育』は春陽と秋月だったんだよね。
 結構そこが心配だったんだよ。
 あの二人やりすぎなとこがあるから…
 そのあとで接客とか、咲也辛くないかなって」
時雨はカルピスを持って一口飲んで咲也の隣に座り、寄り添う。
「今日は久しぶりの逢瀬だから…いっぱい楽しもうよ」

「ん… 春陽も秋月もよくしてくれたよ?
 どこまでが冗談か分かんないとこあったけど」
苦笑いを浮かべ。
「…時雨が 僕のために…
 変なお客様を…
 身代わりしてくれてたのとか…
 教えてくれた…
 聞いた時から言いたかったのに…
 逢えなくて… やっと言える…
 今までありがとう…
 時雨…ちゅ」
カルピス味のキスを交わす。

「あの双子は、ほんとに掴めない。
 結構長い付き合いだけどいつも肩すかし食らってる感じだし…」
と、咲也の言葉に納得してうんうんと頷く。
そしてどうやらあの二人が『秘密』を漏らしてしまったらしい。
ふうと一息ついて
「ん…まだ咲也には早いと思っただけだよ。
 いつかは経験しなきゃいけないんだ…
 お礼なんか…んっ…ちゅ…」
暖かい唇が触れて、唾液がじんわりと広がる。

「…ちゅ ん…
 そうだね 春陽と秋月の『再教育』でまだまだ学ぶことがあったし
 以前の僕じゃ…無理だったと思う…
 でも…これからは…
 自分の指名客はちゃんと僕が相手するよ…」
にこっと微笑んで見せて再び唇を重ねる。
「ちゅく…ちゅ…時雨…ありがとう… ちゅ… 大好きだよ… ちゅ」

「わかった、ならちゃんとお客様の相手しなくちゃね
 でもあまりにも非道い奴がいたら…
 …やっつけちゃっていいから」
と、少々過激に咲也にアドバイスして
「ありがと…ちゅ」
と、ベッドになだれ込んで。

「くす… わかったよ」
時雨の言葉に笑みを零し、時雨のキスで押し倒されるようにベッドに横になる。

「ちゅ…ペロペロ…くちゅう」
咲也の着物を肌蹴、薄い胸板を舌で愛撫していく。
「僕だって、咲也のが欲しかったんだよ?
 お客様のは大きくていいけど…
 咲也のは、なぜだろう…
 ふわふわ心地いい」
と、布越しに咲也の屹立を撫でて。

「んん… あっ ふわふわ…って… んぅッ」
時雨の愛撫に声を零しながら、触りっこという感じに時雨のシャツの上から胸の突起を優しく摘み。

「そう、ふわふわ…
 自分でもよくわかんないけど言葉で言ったらそんな感じ… んあっ」
咲也の手が突起を捉えて弄る。
どこをどういじればいいか咲也には手にとるようにわかるのだろう。
時雨は体をくねらせながら咲也の着物を徐々に脱がして屹立を直に触る。

「はぁ…
 時雨が気持ちいいと…
 思ってくれてるなら…
 どんな表現でもいいけどね…
 んぁ…あッ」
時雨のシャツのボタンを外しこちらも直に突起を弄りながら、びくんと腰を跳ねさせる。

「咲也ぁ…いいよ…
 すごく気持ちいいところいっぱいいじってくれてるから…
 はああっ…」
お互いにお互いの屹立を扱き合い、快感を分かち合う。
ふと手を離して
「咲也、舐めるよ?」
と、咲也の屹立にキスをする。

「ふぁあッ あっ」
お互い扱き合う強烈な快感から、屹立を舐める時雨のまだ濡れた前髪がパラパラと脇腹や足の付け根にこぼれ落ちるくすぐったいような淡い快感まで、全て感じ取っていく。
「あぁッ 時雨…しぐ…れぇ はぁ…」

咲也の体はピクピクと震えている。
咲也の快感がこちらまで伝わってきそうなほどだ。
「ん…はむう…ちゅく…ちゅるるっちゅっ」
咲也の屹立を咥え込みいやらしい音を立てて吸い上げる。

「んっ あっ あぁっ」
この2ヶ月間『再教育』と接客で、毎日といっていいほど身体を触られてきたというのに、時雨の愛撫はまるで別物のように胸が熱くなるように感じて、ぎゅっと瞑った瞳から涙が浮かぶほど感じてしまう。
「ふぁぁ… 時雨ぇ んぁ はぁん…」

シーツを掴む咲也の手が、快感に必死に耐えているを伝えている。
それでも咲也の屹立を容赦なく攻めるように、顔を振って舐めていく。
「んっ…咲也…いっぱい出してね…ちゅるる…ちゅぱ」

「ゃぁあ…あっ ぁぁ…ッ 時雨ぇ ふ… んぁッ」
巧みな時雨の愛撫に耐えようがなく開いた脚をガクガクと震えさせ絶頂が近づくと、シーツを掴んでいた手を時雨の髪に乗せリズムを合わせるように腰を振り。
「んぁっあッ しぐ…っ ぁああッ イくぅぅ…ッ ぁああッ」
時雨の口内にぐっと差し込むように腰を浮かせ白濁を吐き出す。

「ふっ…んぐぅ…ううっ…ごくん…ん、けほ」
屹立が跳ねた瞬間には濃厚な精液を音を鳴らして飲み干していく。
「はあ…咲也…」
いやらしく口の端から垂れる唾液と精液を人差し指ですくいとり、さらに咲也を誘惑する。

「はぁ はぁ… 時雨…」
自分の脚の間にうずくまり妖艶に指を舐める時雨を見つめる。
「時雨…」
身体を起こし時雨に口付け体勢を逆転させるように時雨をベッドに押し倒す。

「咲也、いつでもいいよ…きて」
と、時雨は自分の脚を腕で抱えて孔をヒクヒクと晒す。
さらに指で孔を開き、赤い腸壁を見せつける。
その顔は、どうしようもなく淫乱そのもの。
赤く紅潮しとろけている。

「お客様とシた後だから…
 ほぐさなくっても平気なんだね…
 ん… いやらしい時雨の表情も大好きだよ…」
イったばかりの屹立を孔にあてがい、ぬるぬると精液の残りを擦り付けて滑りを良くしていく。

「やあっ…ん、じらさないでよぉ…はやく…」
腰をくねらせて、早く挿入れて欲しいと全身で訴えかける。

「ん… 時雨のそういう表情も大好き…
 ずっと見ていたいくらいだよ」
くすっと微笑んでから、ゆっくりと孔に先端を埋めていく。
「うぁ… 時雨の中…熱ぃ…」

「はっ…ああああぁう…咲也ぁ…」
ぎゅうと目をつむる。
咲也の屹立はお客様のものよりもひとまわり小さいが、ずっと気持ち良く感じられる。
喘ぎ声もずっと甘く甲高い。

「ふぁ… 時雨 時雨…ぇ…」
ゆっくりと奥まで沈めて、ぎゅっと腰を掴んでゆっくりと動き出す。
別荘で時雨と溶けてひとつになりそうだった感覚を思い出しながら。
「はぁ 時雨ぇ」
パンパンと肌を打つ乾いた音と、ぐちゅくちゅと孔が泡立つ音が部屋に響く。

熱い、とにかく焼けただれそうなほど熱く感じられる。
一突き一突きが快楽の波となって時雨を襲う。
「んやああ…ひぃん…くうああ…」
腸壁が引きずり出されそうになる感覚が、時雨を堕としていく。

「んぁあ… はぁ… 時雨ぇ あぁ…」
入れた時から熱かった孔がどんどん熱を帯びていくような感覚、きゅうきゅうと締め付けるように蠢く感覚に頭の中がぼやけてのぼせたようになり、熱さの中の快感に溺れていく。

「きてぇっ、いっぱいちょうだい…
 さくやっ…ああっ」
自らも腰を振り、最奥へと咲也の屹立を埋めていく。
前立腺にこすれるたびにだらしなく舌をだして、うるうると潤んだ瞳からは涙がこぼれる。

「んぁッ 時雨 そんなに…したら…うぁっ んんっ ぁ…っ」
自分から腰を振ってくる時雨の腰を掴んでいた腕を離し時雨の屹立を掴み扱き上げながら前立腺を激しく突いて絶頂へと導いていく。

「はあああっ、いくっイっちゃうよぉっ、んあっあああ」
はばからず喘ぎ声を上げ、咲也の攻めに絶頂は近い。
「んひゃああああああっ」
と、一層大きな声と共に白濁を吐き出して、咲也と時雨の腹を染める。

「んぁぁッ ぁぁ…ッ」
手の中で時雨が果てるのを感じながら、時雨の中に熱いものを注ぎ込む。
「はぁ… はぁ しぐ…れぇ… はっぁ」
ブルブルと時雨を掴む腕が震える。

「ああ…この感じぃ…
 久しぶり…咲也の精液の熱さだ…」
まだ快感による震えが止まらない中、咲也を抱き寄せてぬくもりを感じる。
「咲也の精液感じてたいから…今日はもうシャワー浴びない」

「はぁ はぁ うん… ありがと…」
まだ乱れた呼吸のまま時雨を抱きしめ。
別荘での時もお互いを感じたまま眠ったっけと思い出し、少し汗ばむ身体でも気にせず抱きしめ合う。

「また明日も大変だから…
 このまま、あの日のように寝ようか」
二人過ごしたあの日々をもう一度なぞるように抱きしめ合いながらコツンとおでこを当てる。

「うん… 時雨を感じたまま…眠るの…久し振り… 嬉しい…」
おでこをくっつけながらにこっと微笑んで。

「それじゃ、おやすみ咲也」
咲也の頬にキスをして瞳を閉じる。
またこんな日くることを期待しながら。

「おやすみなさい…時雨」
時雨の手を取ってぎゅっと握り、一緒に夢の中に落ちていく。




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