第十話
「嵐の夜に」
時雨の夢の件で、気まずく別れてから2週間が経った。
今までもお互いの仕事が重なったりで4〜5日顔を合わせないこともあったが、この2週間は朝の食堂でも夜のシャワールームでも時雨と顔を合わせていない。
時間が経つにつれ謝るタイミングを逃していくようで咲也はどんんどん気まずく焦りを感じていた。
こんな心境で仕事がこなせるわけもなく、前々から女将に華道や茶道の心得も嗜んでおくように言われていたのを口実に仕事は休んで、稽古に励むことにしていた。
そんなある日。
雨が激しく降る春の嵐の晩。
山奥の遊郭に不似合いな大型バイクのエンジン音が低く響き、常連のお客様の高級車に混ざって駐車場に入って来た。
女将から華道の指導を受けていると、ロビーから男数人のわめき声と旦那の声が聞こえてくる。
「なんだか騒がしいですね。ちょっと見てきますね」
「はい… なんでしょうね?」
女将について咲也も様子を見にロビーへと向かう。
あの夢の日以来、どこか落ち着いて過ごすということはなかった。
どこかしこりが残っているような不快感がぐるぐると胸の中に回っている。
咲也ともあの日以来なんとなく話すのが億劫になってしまい、ちらと見かけても特に声をかけるわけでもなく、意図的に避けて居る感じになった。
今日はたまたま予約が少なかったために、モヤモヤを感じないためにも、ゆっくり惰眠を貪ろうと布団に篭っていた。
しかし、吹き荒れる風の音と相まって外から聞こえる騒がしさにしばらく無視して我慢していたが騒ぎは大きくなるばかりで、イライラと不機嫌そうに部屋を出る。
「もう… 一体なに…?」
目を擦りながら騒音の方に向かう。
咲也がロビーに着くと、ロビーや見世には同じように騒ぎを聞きつけ様子を覗き見している男娼達が集まっていた。
その中に時雨の姿を見つけるが、この状況で話しかけるわけにもいかず、騒ぎと時雨を交互にチラチラと見ていることしか出来なかった。
ロビーの入り口には暴走族風の男が5人、旦那を相手に喚いていた。
リーダー風の男が一人の男娼の子の腕を掴んで。
「こんな山の中で雨に降られて 泊まるところもないから ここで遊んでやろうと思ったのに こんなガキ1匹でそんな値段すんのかよっ」
と怒声を飛ばしている。
もう一人の男が
「5人で1人のワリカンでも構わねえよ? 俺たち『穴兄弟』になるのなんて慣れてるからさぁ」
その言葉にゲラゲラと下品に笑う仲間達。
旦那が厳しい声で
「うちはそんな安いやり方はしていません。 お引取り願おう」
と、言うと用心棒達が男達の侵入を防ぐようにロビーの入り口を塞ぐが、男達は用心棒に殴りかかり隙間の出来た入り口から中に入り込み、ロビーに集まっていた男娼の子達にいやらしい笑いを浮かべながら近寄ったり、ソファに飛び乗って暴れて横に置かれていた大きな古伊万里の花壺を蹴り飛ばしガチャンと派手な音を立てる。
それまで覗き見していた男娼の群れの中に居た時雨が前方の子達を押しのけてズイっと中央に出てくる。
割られた花壺に花を活けたのが咲也だったことを知ってか知らずか分からないが表情は怒りと侮蔑を表していて…
ロビーには人だかりが出来、その中心でどうやら旦那と客…といっても高級遊廓にはとても釣り合わない不良が揉めているのが見える。
客とのトラブルは何度も見てきたがここまで事が大きくなるのは珍しい。
しばらくその様子を見ていればだんだんと不良達の横暴も激しさを増し、醜態を晒す。
時雨は怪訝に不良達を眺めているだけであったが、男娼仲間が絡まれたり、備品を荒らし回ったりで、流石の時雨も怒りがこみ上げてくる。
さらには高級な焼き物を割られれば、咲也の生けた花と知ってか知らずか人だかりの中心へと乗り出す。
突如現れた時雨に、不良達は一時なんだと顔をしかめるがニタリと卑下た笑みを浮かべて時雨に近づく。
普段平静を装う時雨も、この時ばかりは敵意を剥き出しにして不良達を見上げ
「ねぇ、あんたたち一体なんなの? ここはね、貧乏人がくるとこじゃないだ。 まだ痛い目見ないうちに帰れ」
静かに、しかしその言葉には威厳すら漂うようで…
不良達に一歩も引かず立ち向かう。
「なんだこのガキ… 貧乏人だぁ?」
時雨の言葉にさらに怒りを増したリーダー風の男が指で合図を送ると4人の男達が集まって来て時雨を取り囲む。
「お前こそ、その綺麗なお顔が商売道具なんだろう? 傷物にしてやろうか?」
一人の男が割れた花壺の破片を拾いピタピタと時雨の頬に押し付け脅す。
「時雨! 勝手なことはするな 下がっていなさい」
旦那が慌てた様子で時雨を止めに入る。
その様子を見ていて飛び出しそうになっていた咲也の腕を女将が掴み。
「あなたもですよ 咲也」
静かに制止させられてしまう。
時雨の回りに、二回りも大きな不良が取り囲む。
破片を押し当てられても時雨は態度を改めるわけでもなくさらに言葉を発する。
「なに? 帰んないの? それなら黙って誰かを買っていきなよ。 ああ… 貧乏人には手が届かないから ごねてるんだっけ」
ふんと挑発するように鼻で笑い。
静止する旦那をよそに静かに不良を罵倒する時雨。
「そんなに抱きたいなら、別に僕が全員相手をしてあげてもいいんだよ? もっとも…割り勘で花代払えるかどうかわかんないけどね」
男娼として誇り高く宣言して…
「旦那様、こいつらは… どうあっても引かないみたいだから… 僕に任せてくれませんか? 他の子なら…壊されかねないから」
旦那の方に目を向けどこか意を決したように話し。
その場に居た全員が時雨の言動にザワめく。
咲也ももちろん時雨を心配して女将が止めていなかったら
「やめてっ」
と、叫びたい気持ちでいっぱいになっていた。
「時雨… 本気かね? 御法度を犯すことになるぞ」
旦那がそう言っても時雨はまっすぐ旦那を見据えて無言で頷くだけだった。
「…仕方がない お前がそこまで言うのなら 条件付きで許そう 『部屋の鍵は掛けるな』 『私達が見守る』 『いきすぎた状態になったら止めさせる』 …これでいいか?」
「大丈夫です… ここは僕の家みたいなものですから… こいつらみたいなのには荒らされたくないんですよ。 他の子が輪されるとこなんか 見たくないし… 淫乱な僕が適任ですよ」
旦那の条件ににっこりと笑って応じ。
また厳しい目つきで不良たちを見つめる。
「ほら… 抱きたいんならさっさと 代金払ってくれる? そしたらそれなりの 『おもてなし』をしてあげるからさ。 さあ、どうするの?」
厳しい口調で不良達をなお見つめて。
「おい、お前ら財布出せ」
4人から財布を出させ万札を抜き取ると、合わせて100万円程になっていた。
「生憎だったな 俺たちお育ちはよろしくねぇがお坊ちゃまなんでね」
ベシベシと札束で時雨の頬を打ってから。
「ほらよ」
と旦那に向けて投げつけるとロビーに紙幣が舞う。
「へぇ…結構出せるんだね。 まぁちゃんと出してくれるんなら全然文句もないしね… さっさと行こ?」
強がる不良に対して嘲るように言葉を吐いて。
「なんだかゴチャゴチャうるせぇが こいつをヤっちまっていいんだな?」
ゴネた者勝ちといった風にニヤニヤ笑って時雨を背中から羽交い絞めにして。
「どこでヤるんだ? こいつらが見てるまま ココでヤっちまっても良いんだぜ?」
5人の男達はぐるっと周りを見回して。
「ヤリたくなったらお前らも犯してやるぜ?」
と下卑た笑いを投げかける。
不意にリーダー格の不良が時雨の体を羽交い締めにして欲望を口走る。
呆れたように時雨は息をついて。
「羽交い締めってことは僕を買うってことだね…
じゃあココのルールに従ってくれる? 部屋はボーイの子が案内してくれるから」
口調は相変わらずだが一応お客として不良達を扱いボーイに部屋に案内させるように言う。
ボーイがロビーに集まっている男娼達をどかせて通路を作り、時雨の部屋まで案内していく。
時雨を羽交い絞めにしたままの男と4人の男、続いて旦那と女将が時雨の部屋に向かう。
咲也も居ても立ってもいられずに後に続く。
何人かの男娼達も付いてくる。
時雨の部屋につくと男達は部屋を見回し。
「へーぇ やっぱそこいらのラブホとは違うな」
「まぁ ヤッてる間は部屋なんて 関係ねぇけどな」
などと話しながらドアを開けたまま、見守る旦那と女将に向かって
「んじゃ 早速ヤらせてもらうぜ」
と言い放ち。
「ほらよっ」
と羽交い絞めにした時雨のシャツをビリリっと一気に引き裂く。
旦那と女将の後ろから覗いていた咲也は、時雨の夢の話を思い出していて…
こんな風にされたら…時雨だって…
壊れちゃうじゃないか…
と涙目になって目を逸らす。
羽交い締めにされながら部屋に連れて行かれる時雨。
特に怖がる様子もなくただただ不機嫌そうに顔をしかめている。
部屋に辿り着けばすぐさま時雨の服は引き裂かれてニヤニヤと不良達が見下すように時雨を見る。
「時間まではこの身体は あんたたちのだから…好きにすれば? せいぜい気持ちよくさせてよね? まあ、テクニックなんて たかが知れてるけど?」
時雨も不良を馬鹿にするように凄んでいる。
「ほらよ『おもてなし』してくれるんだろー?」
「別にお前を気持ちよくさせてやることはねぇんだよ。お前こそせいぜい腰振るんだな」
シャツは破きズボンは足首から抜き取り
「おい ちょっと代われ」
と羽交い締めにしていた男が時雨を別の男に渡して、ぐいっと時雨の頭を押して床に這いつくばさせる。
自分の服を脱いで屹立を時雨の口にねじ込み。
「お前こそテクニックってやつを見せてみろよ」
時雨の髪を乱暴に掴んで口内を犯していく。
その間に床に仰向けに寝転がった男が二人、左右の乳首に吸い付いてくる。
もう一人の男が時雨の脚を開かせてやはり仰向けに寝転がって時雨の屹立をしゃぶり出す。
交代して時雨を羽交い絞めにしていた男がもう時雨が動ける態勢じゃなくなったのを見計らって手放し服を脱ぎ、4人の男に甚振られている様を見ながら、時雨の孔をいじくり。
「リーダー… 早く代わってくれよ」
時雨に入れたくてウズウズしたような声でニヤけている。
口々に時雨を煽る不良達に時雨はこれ以上何も口答えすることもなく細い体はいとも簡単に突き倒されて不良の屹立が時雨の小さな口にガツガツとねじ込まれる。
「ふぅ… ぐぐっ …んぐぅ…」
気丈に屹立を咥えて苦しい素振りも見せずに喉で『奉仕』をしていく。
二人の不良が乳首に吸い付けば時雨の口からは甘い声が小さく漏れ出して。
時雨の屹立をねっとりと舐められその声は徐々に大きさを増す。
時雨の性感帯をいたる所なぶられて早くも恍惚にも似た表情を浮かべて…
「おいおい さっきまでの勢いはどこ行ったんだよ? メロメロじゃねぇか」
自分の屹立を咥えてエロイ表情をしている時雨を見下ろして口内ですっかり大きくなった屹立を抜き取り。
「おぅ 待たせたな」
と仲間の男と位置を交代する。
「いくぜぇ…」
さっきの男が軽く弄った程度でまだほぐされていない孔に屹立をあてがい一気に貫く。
服を脱いで待機していた男は、自分で弄っていたのだろう始めから大きな屹立を時雨の口に押しこむ。
「うはぁ… たまんねぇな」
ガツガツと腰を前後に振り始める。
しばらく乱暴に時雨の口を犯していた男は、不意に屹立を引き抜いていく。
そして快楽にふやける時雨を見下しつつ孔に屹立を押しつける。
「んああ… それ…誉め言葉? 僕はいつだって淫乱なんだよ… ひあああっ」
凶悪な屹立をあまり慣らしてもいない孔に突き立てられれば、痛みと快楽に身をよじらすも身動きが取れない時雨は、ビクビクと身を震わせるのみで…
5人から同時に激しく攻められる時雨…
それはまるでレイプそのもので咲也が止めに行きたくても旦那と女将が入り口を塞ぎ、じっと時雨の様子を見守っているのを見ると、下手に手出しもできなくて…
「ぐぅ…うぅぇ…ぐおっ…むぐぅ…」
間髪入れずに口にねじ込まれる屹立…
その臭いに頭がクラクラする。
後ろの方も容赦なく前立腺を突き、乳首も自らの屹立もしゃぶられ蹂躙しつくされていく。
「んあああっ…んむうっ…ふううううっ」
くぐもった吐息は明らかに快感からくるもので…
時雨はこの状況でも楽しんでいるかのようで。
「キツキツのエロケツマンコだな 最高だぜ」
ガツガツと腰を振ると時雨の小さな身体は全身ガクガクと揺らされて、その揺れが乳首に吸い付く男達に動きを与え時雨の乳首が上下に擦られる。
口を犯している男はリーダーと呼んでいた男の動きに合わせて時雨の身体を前後からなぶるように腰を振っていく。
時雨の屹立をしゃぶっていた男が、
「こっちもぐちょぐちょッスよ ガキのくせにいい感度してるッス」
時雨の屹立から滴り落ちる先走りを舐めながら右手で根元から激しく扱き亀頭を舐めまわす。
時雨の細い体は今にも壊れてしまいそうな危うさがありながらも、5人の攻めを受けきっていて…
ガツガツと後ろから前から突き立てる屹立をしっかりと咥えこんでいる。
しかし、与えられる強烈な快楽には耐えられない。
いやらしく舐められ、先走りをトクトクと溢れ出させていた屹立も限界を迎え。
「ふぐうううううぅうっっ」
くぐもった叫び声とともに不良の口の中で達してしまう。
しかしそれだけで済むはずもなく、男達は射精後の脱力した時雨を容赦なく攻める。
「んぁー もうイっちゃったッス ぺっ」
時雨の白濁を飲み込む気はなく床に吐き捨てる。
「ほら代われよ」
と今度は乳首を舐めていた男が屹立を咥え、イったばかりの時雨に無理やり勃たせるような手つきで扱き吸い付く。
「んじゃ 俺も… ふぅ…んぁッ」
時雨の中に一発目の射精がされる。
口を犯していた男も、
「ちゃんと飲み込めよぉ?」
と喉に目掛けて勢い良く白濁を吐き出す。
乳首を舐めていたもう一人の男が、時雨の口に屹立を押し当て。
「乳首であんあん鳴いててかわいかったぜ。 俺のことも気持ちよくシてくれよな」
時雨に休む暇を与えず、5人が交互に時雨の口か孔に射精を続けること約2時間…
流石の時雨も床に這いつくばっている腕がガクガク震え、全身に精子を浴び、態勢をたもつのがやっとという状態になっていた。
「ぐぅう…ごく…こくん…げほっ」
不良の濃厚な白濁にも臆することなく、飲み干せば同時に後ろの孔にも白濁が注ぎこまれる。
圧倒的な甘美に時雨の身体には力が入らない。
しかし不良たちはまだまだこれからと行為を止めようとはしない。
代わる代わる犯されなぶられてもう何回射精したかわからない。
身体は不良の精液にまみれて口からどろりと唾液と精液を垂れ流す。
「はあっ…はあ……もうお仕舞い?」
身体を震わせながらも折れそうな心を奮い立たせて不良達に食い下がり。
まるで
「まだまだヤレるよ」
と言わんばかりに男達を見回す時雨に、一人3回ずつはヤったであろう男達は性的快感よりも虐待に似た快楽を求め始めていて。
「ちょっと休憩だ おらっ」
床に這いつくばる時雨を破れたシャツの襟を持って引っ張り上げ、ベッドに投げ落とす
ドサッと力なくベッドに身を投げ出す時雨に馬乗りになってガツンガツンっと拳を振り落ろす。
「俺達も育ちは悪いが どうやったらお前みたいな 生意気なガキに育つんだかな」
「親の顔が見てみたいぜ」
と罵りながら時雨を殴り続け、他の男達は乳首に強く噛み付いたり屹立の先端から血がまじる程に歯を立てたフェラを与えてくる。
軽い挑発、のつもりだったが不良たちの勘に障ったのか乱暴に時雨の身体をベッドに投げ飛ばし馬乗りになる。
「なんの…つもり…? ぐぅっ!」
か細い声で不良たちに問いただすも返ってきたのは拳で、時雨の顔や腹を殴りつけてくる。
他の不良も口々に「親が」「親の」などの罵声を浴びせつけてくる。
「やめろ…やめろっ… こんなこと…ぎゃっ… 痛いっ…やめ…ろ」
時雨は抵抗するものの大人が5人がかりでは抵抗すら敵わない…
声は震え、痛みから涙が溢れる。
乳首は千切れんばかりに伸びきり、噛まれ、屹立は耐え難いほどに痛みを与えられる。
「やめろ…やめろ…」
蘇ってくるあの光景…
脳裏によぎるは夢よりもっと鮮明な残酷な景色。
ここは現実? 夢?
時雨の体はカタカタと震えだし、歯はカチカチと鳴る。
振り下ろされた拳が最後の引き金となり…
「いやああああああああああああっ!!」
ついにたがが外れたように叫ぶ。
泣き叫ぶ時雨をいたぶることに興奮したのか、男達はベッドに立ち上がり、時雨をガスガスと蹴飛ばしまくる。
服を脱いでいた2人以外は靴も履いたままで…
身体を丸めて自分を守るようにうずくまる時雨をサッカーボールのように蹴飛ばし転がしていく。
最後の悲鳴の後意識を失っているのか声も上げずいたぶられる時雨に旦那がついに止めに入る。
「それ以上は接客とは 言わせないぞ!時雨」
「邪魔すんなよオッサン。これからがお楽しみなんじゃねぇか」
動かなくなった時雨に再度5人の屹立が向けられる。
時雨に何回も射精したのにまだまだ元気そうな男達は、何か薬物でもヤっているのだろうか、衰えることのない屹立を時雨に押し当てて。
「だったら次のガキを出しな」
と言って反応しなくなった時雨を、つまらない物のようにベッドから投げ飛ばす。
5人にいいように足蹴にされて、トラウマがフラッシュバックし、もはや時雨の心はボロボロに踏みにじられた。
体も輪姦されつくして体力の限界だ。
目の前が霞み、口の中は血の味がする。
旦那が不良を止めにかかるが、そんなことでこいつらがとまる訳がない。
獣と同じなのだから。
うずくまっていた時雨はフラフラと立ち上がろうとするが…
もう用済みと言わんばかりにゴミのように投げ捨てられれば、悔しさからか声も出ずすすり泣き…
意識が遠のいて…
「時雨…っ!」
ダッと部屋に走り込んで時雨が頭を打たないように、床ギリギリで時雨を抱きとめる咲也。
「今度は『お嬢ちゃん』が 相手してくれるのかなぁ?」
ニタニタと下品な笑いを浮かべながら、少女のような咲也に手を伸ばそうとする男の手を、パシっと払い除け、時雨を部屋の壁際に避けてから、ゆらりと立ち上がり…
「いいですよ… お相手します」
意識を手放しそうになった瞬間に柔らかい感触が頭を支える。
うっすらと目を開ければそこには咲也の顔があった。
今にも泣きそうな、それでも見たことのないくらいに怒りに震えた顔だった。
「なんで…来たの…」
息も絶え絶えに問いただすも咲也はなにも言わずに時雨の身体を壁際に寄せて不良たちに立ち向かう…
「やめ…ろって…なんで… 咲也は…関係ない…」
今度は咲也までも壊されてしまうのか。
しかし時雨の声は届かず、腕にさえ力が入らない。
「時雨… 大丈夫だから」
時雨を安心させるように振り向いて、微笑んで見せてから、正面を向くとキッと相手を睨み…
タンっと床を蹴って飛び上がったかと思うと、ベッドの上から時雨を投げ飛ばした男の顎に回転をかけた蹴りを食らわせ、ベッドから蹴り落とすと、ドサッと倒れこむ男の鳩尾目掛けベッドから飛び降り踵を落とし。
「ぐえッ」
と、情けない声を出させる。
「何だ コイツ…!?」
咲也の動きに驚く男達の方に振り返ると、
「ハァッ!」
と気合を呼び起こすための発声をし、20センチ程の身長差も物ともせず、大外刈でベッドから落とし、後頭部を打った男はそのまま伸びてしまう。
「お…押さえつけろっ」
残った3人が同時に咲也に飛びかかるのを、姿勢を低くして待って、飛びかかってきた勢いを利用し1人を巴投げして、もう1人にぶつける。
残る1人も払腰でダンッと床に叩きつけ 最初にベッドから蹴り落としたリーダー格の男が、腹部を押さえて起き上がろうとしたところを、片足を相手にかけ後方へ倒れこむようにして腕挫十字固を極める。
「いででで…っ 離せぇ!」
関節が外れても構うものかと思いっきり捻り上げる咲也に、旦那の声が飛ぶ。
「そこまでだ咲也 あとはこちらで引き受ける」
バラバラっと用心棒達が部屋に入ってきて、5人の男をそれぞれ拘束する。
「はい…」
ふぅ…っと肩で息をしながら乱れた着物をそのまま脱いで、壁際に避難させておいた時雨にかけて包み込むようにして。
もう駄目だ…
咲也もやられてしまうと思った瞬間に、、いつもはゆるゆるとしている咲也が鋭い蹴りを放つ。
不良は転げ回り、他の不良たちも咲也に投げられて関節をキメられる。
ぼやける目の前の光景は夢ではないかと考えているうちにどっと疲れや痛みが襲いかかり、間もなく意識を飛ばす。
最後に見た光景は、咲也が不良をのしてこちらに歩んでくる姿…
男達の処分は旦那と用心棒達に任せ、着物で包んだ時雨のこんな姿を廊下で聞いていた男娼達に見せたくないと言うように抱き上げ急いで自分の和室に連れて行く。
来客予定の無かった温泉は空で、湯船に時雨と一緒に入り半襦袢と袴が濡れるのも構わずお湯を張りながら、時雨の破れたシャツを脱がせ、血が滲む身体を優しく洗い。
『アソコ洗浄用ノズル』で5人が何回注ぎ込んだのかグチャグチャの孔を洗っていく。
口にも咥えさせられていたので、時雨の唇に指をかけ開かせると、時雨が飲み込んでしまわないように 一旦自分の口にお湯を含んでから舌で口内を洗うように舐めては、お湯を吐き出すのを繰り返す。
1時間程時間をかけて丁寧に身体を洗って、あの男達の痕跡を可能な限り消してからバスタオルに包んで布団へ運ぶ。
「咲也…」
部屋の外から男娼仲間が呼びかけてくる。
障子を開けてみれば咲也の部屋の前には、同じように心配してくれたのだろう、男娼仲間が医務室の救急箱や、水やお菓子などの差し入れを持って何人か集まっていて。
ありがたくそれらを受け取って。
「今はまだ寝てるから…」
とお見舞いは丁重に断って男娼仲間の姿が見えなくなるまで見送ってパタリと障子を閉める。
時雨を包んでいたバスタオルを広げて、時雨の身体に出来た、歯型や引っかき傷や打撲の痕を消毒して軟膏を塗り、小さな傷には絆創膏を、大きな傷にはガーゼを当てて包帯を巻いていく。
乳首や屹立など敏感な部分ほど、噛み千切らんばかりに攻められたのだろう、温泉で洗ったというのにまだ血が滲んできて…
時雨の手当をしながら、泣きそうになるのを、ぐっと耐え、治療を終えて。
自分の浴衣を着せて寝かせて、時雨が目覚めるまで手を握って見つめているとピクっとまぶたが動き時雨が目覚める…
「時雨…」
『大丈夫?』なんて聞けない…
なんと言葉をかけていいか分からず、ぎゅっと手を握りしめて見つめている。
目を開けば、畳の匂い。
柔らかな布団の上に時雨は居た。
ちゃんと身体は綺麗に洗われて、傷も手当てされている。
手にぬくもりを感じれば、そこには咲也が心配そうに見つめていて…
無言のままなにか言いたげにしている。
「咲也…」
一言そう呟いただけで、その先の言葉が続かない。
しばらく静寂が部屋を包む。
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