番外編 第四話 「待ち望んだ日」
番外編 第四話
「待ち望んだ日」




「…分かってんだろうな?
 僕ならいつでも相手になってやるから
 さっちゃんには手を出すなよ」
多勢に囲まれながらも怖気ずくことなく相手をきっと睨み時雨が強い口調で威嚇する。
「分かってるって
 それにアイツ 今度の柔道部の大会で全国大会行くんだろ? そんな強そうに見えねぇのに 怖い怖い」
時雨を取り囲んだ奴らが笑いながら頷く。
「手前みてぇに素直にヤラせてくれりゃ 痛てぇ目見ねぇんだし …なぁ?」
ぐいっと乱暴に時雨を床に這いつくばさせ
「いつものようにシな」
と、もう何度繰り返してきたか分からない行為を時雨に要求する。
それに黙って従い不良の制服を脱がせ屹立を咥え愛撫していく時雨。
『さっちゃんを傷つけないため』にずっと繰り返してきた行為を始める…

全員にフェラをしてイカせ、その間に自分の孔にも射精させられても疲れた様子も見せず逆にもっと欲しがるように身体をくねらせる時雨はいつからだか『淫乱』と呼ばれるようになっていた。

どんな行為でも受け付ける、人数も場所もお構いなし、ただひとつの条件は『さっちゃんにバレ無い事』

そんな美味しい条件の時雨を性に目覚め興味津々の世代の中学生が放っておくはずもなく、時雨のことを『淫乱』『肉便器』などと罵りながらも自分達の欲望を発散させていた。

「…ちゅく ぷはっ  悪いね 時間だよ 今日はおしまい」
最後の不良の白濁を飲み込んで孔に挿入しようとしている不良を止める。
さっちゃんの部活が終わる時間には行為の形跡を消して待っていたフリをしなければならないので時間厳守なのだった。

「チッ 明日は俺が最初だからな」
悔しそうに時雨の身体を離し不良が捨て台詞を吐いてゾロゾロと音楽室から出て行く。

「ふぅ…」
季節は夏に近づき行為の際にどうしても汗ばむ季節になっていた。
部活をしてるわけじゃないのに汗ばんでいるときっとバレてしまうと思い、今の不良の中にはいなかったが水泳部員の先輩からシャワーの使用の許可を得ていたので急いでシャワールームに向かう。
水泳部員とは顔を合わせないように部活が終わる30分前くらいが時雨のシャワータイムになっていた。
髪を濡らさないように気をつけながら全身をシャワーで洗い流し行為の形跡を消す。

シャワールームから音楽室に戻るとさっちゃんが迎えに来るまで楽器をいじる。
ピアノを演奏しているときもあれば、音楽の授業で使われたまま唾液や手汗で汚れた楽器の手入れをしていたり、その時の気分でまちまちだったがどうやらしーちゃんはそうして居るのが好きらしい。

「お待たせ しーちゃん」
ギターの弦のサビを落とし調律して軽く弾いているとさっちゃんが迎えにやってくる。
「ん…」
まだ何本か手入れの出来ていないギターを、明日また手入れする分として分別して棚に戻す。
「また手入れしてたの? 音楽の先生が誰がやってくれてるのかっって探してたよ?」
しーちゃんがこっそりやってるのを知っていたので先生には伝えていないが、しーちゃんが自分から名乗り出ればいいのにと微笑みながら見つめ。

「いいんだよ 言わなくって」
しーちゃんにしては珍しく照れたように苦笑いを浮かべて。
「昔はさっちゃんもお婆ちゃんのピアノ弾いてたけど、最近は柔道ばっかりだよね。 まだ弾ける?」
ピアノの椅子に腰を落ろし蓋を開けポロンと鍵盤を撫でる。

「えー 僕はお爺ちゃんとの柔道の方が向いてたみたいだからなぁ しーちゃんみたいにスラスラ弾けなかったし… あ でも好きな曲は覚えてるよ?」
しーちゃんの横にちょこんと座って右手だけで久しぶりの鍵盤をたどたどしく弾いていく。

「…それ 好きな曲なの?」
さっちゃんの奏でる音に意外そうな顔をして
「うん 右手の分しか弾けないけど…」
ポロンポロンと優しいメロディを奏でるさっちゃんにしーちゃんも一緒になって鍵盤を弾く。
「これが左手のパートだよ」
ポロロンっとさっちゃんの弾く速度に合わせて
少しゆっくりと弾き連弾していく。

「あ そうそう そのメロディだ しーちゃんが覚えてるなんて珍しいね」
いつも自分で作った歌を子守唄のように歌ったりピアノで弾いてくれていたしーちゃんだったが、同じ曲は二度と聞けず忘れてしまっているのだと思っていたのでしーちゃんが連弾してくれることに喜ぶさっちゃん。

「さっちゃんが弾いてるの聞いたら思い出した… さっちゃんこそよく覚えてたね こんな昔の曲」
自分の作ったでたらめな音楽をちゃんと覚えていてくれたことになんだか気恥かしくて。

「え? そうかな? しーちゃんの弾いてくれた曲は ほとんど覚えてるよ?」
きょとんと『なんでもない普通の事』のように言うさっちゃんに驚き思わず聞き返す。
「え? 全部覚えてるの? 何百曲って弾いたか分かんないよ?」

それでもさっちゃんはコクンと頷き
「覚えてるんだけど 弾くのは難しいなぁ」
と、言って別の曲を弾き始める。
しーちゃんはその姿にただただ驚くばかりで。

「さっちゃん… すごい音感だね それにその暗記力… 採譜師になれるよ…」
さっちゃんの隠れていた才能にすごいすごいと髪を撫でて褒めまくる。

「『さいふし』…?」
聞き慣れない言葉に首を傾げながら、髪を撫でてくれるしーちゃんを見つめ嬉しそうに撫でる手に擦り寄り甘える。

「ベートーヴェンはピアノの即興演奏の名手だったけど 耳が不自由だったからメトロノームを 使ってリズムをとって演奏してたんだ。 モーツァルトは新曲を弾いている間にも もう次の曲が浮かんでしまう程で 譜面にしている時間も無かった。 だから採譜師っていう聴いた曲を楽譜にする 専属の人を雇ってたんだよ。 さっちゃんの耳ならそれが出来るよ。すごいなぁ」

「へぇー そうなんだ」
しーちゃんの説明に出てきた『偉大な音楽家』の名前にそんなすごい人と並べて褒められても…っと苦笑いを浮かべ。
「でも僕が覚えてるのしーちゃんのピアノとか鼻歌の子守唄だし… 作曲出来るしーちゃんの方がすごいと思うなあ」

「作曲っていうのかなぁ…?」
ただ頭に浮かんだまま適当に鼻歌にしたり、でたらめにピアノを叩いてただけのつもりだったのにこうしてさっちゃんが覚えていてくれたことで初めて『曲』として残っていたことにまた照れたように微笑む。
「ありがとう さっちゃん… 僕の音を覚えててくれて ちゅ…」
横に座るさっちゃんの耳元で囁いて軽く口付ける。

「ん… しーちゃん…」
防音の音楽室でするのは初めてではなく、さっちゃんもキスに応えてするっとしーちゃんの首に腕を回し夏服の半袖のワイシャツをしーちゃんの手で脱がされていく。

「さっちゃん… ちゅ…ちゅく…」
「あ…んっ しーちゃん… ふぁ ちゅぅ…ちゅる…」
オレンジの夕日が差し込むまだ眩しいくらいの音楽室で気温の暑さとは別の熱を感じながら二人抱きしめ合い。
さっちゃんも部活後にシャワーを浴びてきたにも関わらずその肌はしっとりと汗ばんでいって…

「んっ …あぁ しーちゃん はぁ…ん」
しーちゃんの愛撫に声を上げ、ぎゅっとしがみつくように抱きしめていると、いつもの行為なのに何か別のものを感じ始める…
「はぁ …うぅ…ん しーちゃ… あぁ…あ…あ…っ」
その感覚は徐々に増していきしーちゃんがズボンの上から屹立を撫でるとビクンっと全身を震えさせしーちゃんに伝わる。

「さっちゃん…?」
いつもと違う反応を示すさっちゃんを見つめる。
「…さっちゃん もしかして ここ気持ちいい?」
慣れた手つきでベルトとファスナーを外しさっちゃんの屹立を取り出すとゆっくりと扱く。

「ゃぁあッ なんか…変…っ んぁっ ぁ…っ」
今までに感じたことのない感覚にブルブルっと全身を震わせ快感からゾクッと肌が総毛立つように震える。

「…… ちゅく ちゅ」
そんなさっちゃんの反応を確認するように屹立を咥え愛撫していくとここ数日にもシタ時にはなんの変化もなかった屹立が口の中でビクビクと震え大きさを増していくのがわかる。
「さっちゃん… もしかして… イキそう?」

「はぁ… は… 分かんない… でも… そこが熱いよぉ…」
初めて感じる感覚に戸惑い薄ら涙を浮かべながら屹立を咥えるしーちゃんを見下ろして。

「何も考えないで… 僕だけを見てて…」
そう言うと激しく右手で扱きながらチュクチュクと水音を音楽室に響かせる。

「あっあっあっ …ゃあっ しーちゃ…っ ぁぁ…あっ」
しーちゃんの愛撫に合わせて嬌声を上げ座っているのに脚がガクガクと震え出す。
「ぃや…ぁあっ 出ちゃ…う…っ」
こみ上げてくるものを感じてしーちゃんの髪に指を絡ませる。

「いいよ… 来て さっちゃん…」
一層激しく扱き吸い上げ待ちに待った初めてのさっちゃんを存分に味わっていく。

「あっあぁぁっ しーちゃ…っ ぁああーーーッ」
ドクドクと心臓が高なって抑えきれない快感が溢れ出すように、しーちゃんの口の中に初めての精を吐き出す。

「さっちゃん… おめでとう」
屹立から溢れ出た白濁を飲み込み口を離し初めての射精にぐったりと身を預けてくるさっちゃんを抱きしめ、あやすように優しく背中を撫でる。

「しーちゃん… うん…」
やっとしーちゃんの愛撫に応えられたことに嬉し涙を浮かべしーちゃんに抱きつく。
しーちゃんの制服のワイシャツを涙で濡らしながら涙が止まるまでそのままで。

「流石に初めてでもう一回は無理…だよね」
さっちゃんが精通したと思うと口ではなく自分の中に欲しくなってしまうが、流石に無理かと苦笑いを浮かべながら髪や背中を撫で続ける

「うん… ごめんね」
しーちゃんが欲しがっているのが分かったが初めての射精でクタクタになってしまって今はそれに応えられそうにないと謝る。

「…とりあえず 家帰ろうか またおばあちゃんを心配させちゃう」
「うん… そうだね」
快感の名残は惜しいけど夕日の差し込んでいた音楽室も薄暗くなってきていて制服の乱れを直して帰途につく。

その日はなんだか照れくさくって、夕ご飯を食べてる時も一緒にお風呂に入っている時も二人ともなんでか無言で…

夜 布団に入ると、どちらからというわけでもなく自然に身体を重ねて…
いつもはしーちゃんがイッたら終わる行為を
「…次はさっちゃんが入れて…?」
と、初めての行為に発展する。
「うん…」
照れくさそうにしーちゃんの手に導かれながら孔に屹立をあてがうとゆっくりと沈めていく。
「ふぁ… あああッ さっちゃんの… 入ってくる… あぁッ」
ずっと待っていた快感にブルブルと身震いして余すとこなく快感を掴み取ろうと腰を振るしーちゃん。

「うぁ… しーちゃん… 熱い… はぁ んぁ…ッ」
初めて感じる孔の中に目眩を起こしそうなほど快感を感じ。
「やっ だめぇ そんなに動いちゃ…っ すぐにイっちゃうよぉ…」
しーちゃんの腰つきにゾクゾクと感じすぎて、すぐに屹立はキツキツになってしまう。

「いいよ… すぐでもいい… ずっと…待ってたんだから… さっちゃんが『大人』になるの… 早くさっちゃんが…欲しい」
腰を振り孔をヒクヒクと収縮させてさっちゃんを絶頂へと誘う。

「あぁぁッ しーちゃん しーちゃんッ ぅぁあっあぁぁぁっ」
しーちゃんの双丘を抑えるように持ちながら絶妙な動きに初めての屹立は耐えようもなく…
「イっちゃう…っ イく…ぅ… しーちゃんッ あぁぁ…ぁぁ…ッ」
ビュクビュクっと勢い良くしーちゃんの中に注ぎこむ。

「んぁぁッッ さっちゃん さっちゃん…ッ ぁあ…ぁぁぁあああ」
今までの誰の精より熱く感じながら、自分も白濁を吐き出しながらさっちゃんを受け止める。

「はぁ はぁ… しーちゃん…」
ぎゅっとしーちゃんを抱きしめポロポロと涙をこぼす。
「気持ちよかった…?」
まだ自信がなくてしーちゃんに尋ねる。

「はぁ… うん 気持ちよかったよ それ以上に嬉しい… さっちゃんとやっと一つになれた」
抱きついて泣くさっちゃんを抱き返し、髪をかきあげ額にキスをする。

「うぅ… しーちゃん しーちゃん」
お婆ちゃんを起こさないように嗚咽を抑えながら泣き続けるさっちゃんに困ったように微笑みながらずっと抱きしめていると、泣きじゃくった顔のままさっちゃんが顔を見つめてくる。
「これからは 僕がシテあげるから… …もう… 他の人とは…ヤらないで… うっ ぅぅ…」

さっちゃんの言葉に血の気が引く。
「……知ってたの?」

「それくらい分かるよ… ずっと一緒に居たんだから… しーちゃんだけ見てたんだから… 他の人とシタ日は僕に穴を触らせないとか 気づいてたよ…」
泣きながら一気に打ち明けて
「僕がまだ出来ないから… しーちゃんを満足させてあげられないから 仕方ないんだって…思ってきたけど… これからは僕がシテあげるから… もう…やめて…… ふぇ…ぅぅ…」
ぎゅっと出来るだけ力を込めてしーちゃんを抱きしめる。

「…ごめん …ありがとう…」
さっちゃんが焦っていたのは自分のせいだったのだと気づき、他の奴と行為に及んでいたことも知っていて我慢してきてくれたさっちゃんに
懺悔の言葉と、これからはさっちゃんがシテくれるということに感謝の言葉を述べるのが精一杯で。
気づけば自分も涙目になっていた。

「しーちゃん… 好きだよ」
顔を上げてそっと唇に触れ潤んだしーちゃんの瞳をまつげをなぞるように舐めて。

「さっちゃん… 僕も好きだよ」
さっちゃんを今まで壊れ物のように大事に抱いてきたけれどお互い『大人』になった今、何を遠慮することもなくきつく抱きしめ返す。

こうして二人はやっとお互いを手に入れられたような多幸感に包まれながら眠りについていった





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