第七話
「夜桜花見酒」
医務室で眠りについた時雨の寝顔を
しばらく眺めながら髪を撫でる。
ふと『時雨が目が覚めたら軽く食事をさせ薬を飲ませないと』
と、思い立ち時雨を起こさないように
静かに医務室を出る。
台所に向かう途中ロビーを通りかかれば
他の男娼の子と女将さんが
お客をお見送りしているところに
はち合わせてしまった。
一緒に頭を下げ
「ありがとうございました」
と挨拶し入り口の外を見れば
駐車場まで続く見事な桜並木が目に入る。
建物の裏にある小さな渓流の桜も
綺麗に咲いていたことを思い出し
時雨をお花見に誘ってみようと
自室に戻り着替えの着物を持って医務室に戻る。
「時雨… 時雨… 起きれる?」
とんとんと肩を叩く。
咲也の看病の甲斐あってか
熱も下がり身体から気だるさもなくなりつつある時雨。
寝苦しさもなくなり
心地良さそうに浅く惰眠を貪っている中
咲也の声が聞こえてくる。
『あぁ…そういえばずっと側に居てくれたんだっけ』
と、ぼんやりと思い出せば
うっすらと目を上げて…
「ん…んぅ… 咲…也? うん…けふん」
ゆっくりと体を起こせば少し乾いた咳をして。
「身体…だるくない?」
まだ残っていたミネラルウォーターの
ペットボトルを手渡しながら。
「あのね… 桜が満開になってて… 時雨と…
お花見…したいな…って 思って… 行けそう?」
病人の時雨を夜風に晒すのは少々気が引けたが
着物ならば時雨のいつものシャツと半ズボンより
暖かいだろうと思い持ってきた着物を時雨の肩から羽織らせ。
「ううん… ちょっと喉が痛いけど…
大分楽になった、ありがと」
手渡されたミネラルウォーターを少し口に含んで喉を潤して。
「へぇ… お花見ね…」
『そういえば桜の木があったなあ』
と、ぼんやりと思いつつ
「そうだね… せっかくだから行こうかな…」
そう呟くと、咲也の着物がさっと肩に乗って…
「ふふ…和服で花見? 風流でいいじゃん…」
「ん… 時雨は何を着ても似合うね…」
肩に着物を羽織らせたまま
パジャマのボタンを外しするっと抜き取って
着物の襟を合わせ帯を軽く締める。
「ちゃんと着つけるから…立てる?」
ベッドから降りるように言う。
「そう? まぁ…着るのは始めてじゃないけど…
あんまり気にしたことないなぁ…」
和服を好むお客様とシた時に
べた褒めされたが、あまり実感がなくて。
「わかった、よっと…」
ベッドから足を降ろすと
どうぞご自由にと、腕を広げて。
「黒髪が綺麗だから… 着物も似合うんじゃないかな…」
しゅす…と衣擦れの音を立てながら
時雨の腰に腕を回し帯をしっかり結んで。
「はい… 出来たよ
お花見… お団子か何か…持って行こうか?」
着物姿の時雨に目を細めながら
まるで遠足を楽しむ子供のように楽しそうに微笑み。
「ふぅん…咲也からしたら
僕のこと全部綺麗に見えるんじゃなあい?」
意地悪そうに、咲也をにやりと笑って。
「ん…ありがと。あ、甘いものお願い… 僕も何か持ってくるよ」
大人しい咲也が、いつになくはしゃぐように準備する姿に
思わず笑みがこぼれて…
時雨も何かつまみを持っていこうと、台所へ向かう。
「…っ うん… そう…かも…」
小さな声で肯定して一緒に台所へと向かう。
自分のお客様用のお茶菓子を
数点選んで折箱に詰める。
「飲み物は…何を持っていく…?」
時雨に尋ねる。
「ふふ…なに赤くなってんのさ」
小さく答え照れてしまう咲也に
思わず吹き出してしまって。
「えっと…これも、これも…」
みたらし団子やどら焼きなどの和菓子を
箱に詰め込んで。
「えっと… あった… これもね」
ゴソゴソと奥の方から何か取り出せば
酒であろう褐色の瓶を数本取り出して。
てっきりお茶かジュースだろうと思っていた咲也は
時雨の取り出した瓶に驚く。
「え…? えっと それ お酒…?」
「ふふ… 僕のとっておきだよ
あ、お酒飲めなかった?」
未成年だが社会のしがらみとは無縁の時雨にとって
飲酒は特に特別なことではなくて。
「無理なら、ちゃんと他にも持ってくればいいよ」
「ん… 飲んだこと…ないから…わかんない…」
唇に手をやり う〜んと考えて。
「じゃあ 割物持ってく…ね…」
お茶割り用のお茶と青い切子硝子の酒坏を持つ。
「そっか、まぁ要は試しなんじゃないのかな?
色々経験ってね」
ニシシと笑ってみせて、準備ができれば
咲也の腰をポンと叩いて。
「さ、早くいかないと桜が散っちゃうかもね?」
冗談を交えつつ、桜のある場所へと歩き出して。
「ん…」
台所から直接裏口を通って出て
建物の裏の渓流を目指す。
建物から零れる明かりで
夜でも足元は照らされていて。
一本の見事な桜の下にレジャーシートを敷いて
荷物を降ろす。
「うわ… また綺麗に咲いてるね… これ…」
満開に咲き乱れる桜を見上げて
口を開けて見惚れながら。
「でも…眺めてるだけでは面白くないから… ね」
早速荷物をゴソゴソと漁り、和菓子を取り出して。
「もう… 時雨ったら『花より団子』だね…」
くすくすと笑いながら自分も持ってきた和菓子を
時雨と自分の分に取り分けていく。
「まぁ、世の中そんなものなんじゃないのかな?」
くすくすと笑う咲也に、こちらもにやりと笑って見せて。
「いただきまーす …はむ… ん…」
まずはみたらし団子を一つ頬張って…
「ん… これは… 美味しい…」
美味しそうにみたらし団子を頬張る時雨を見て。
「ねぇ… 『風流』じゃなかったの?」
呆れたように笑いながら自分も
桜の花びらを型どった練り切りに楊枝をさして。
「十分『風流』だと思うんだけどなあ…
夜桜の下で少年が和服で花見…
こんな絵はなかなかないよ…?」
くすくすと笑い飛ばして、酒瓶の栓をぴんと開ければ
アルコールの匂いが漂って。
「呑もうか…?」
「自分で言っちゃ…」
ぷっと吹き出し笑っていれば
アルコールの香りに
『うわ 強そう』と思いながら
酒坏を取り出して
時雨に注いでもらうように差し出す。
「うん…」
「ふふ… やっぱり可笑しいか…」
自分でもぷっと吹き出して…
酒杯を差し出す咲也に…
『これ結構強いんだよな』と
若干の不安を抱きつつ
コポコポと酒を注いで
自らの酒坏にも注いでいく。
「えっと… 乾杯…って するものなのかな…?」
時雨が自分の酒坏に手酌するのを待ちながら。
「うーん、一応した方が…それらしいんじゃない?」
なんとなく雰囲気でそう答えれば、酒坏を少し掲げて。
「…特にめでたいことはないけど… 乾杯」
「ん… 乾杯…」
酒坏に唇を付けると少し傾けて
ペロ…っと少しだけ舐めてみる。
「あ… 甘いんだ…」
意外な甘味に安堵しコクンと一口呑み込む。
「そ、僕は甘いのが好きだからね…
辛口のはあまり好かないんだ…」
こちらはこくんと一気に酒を呑み干す。
程よい甘さと、アルコールの焼けるような感覚が喉を突く。
「うん…呑みやすい… こく…」
少量呑んでは和菓子を食べ…と
あまり勢い良く呑まないように
気をつけながら花見酒を楽しんでいく。
美味しそうに呑んでいく咲也を眺めつつ
手酌で酒を注いで…
ひらりと舞い落ちた桜の花びらが酒の上に触れて…
「綺麗…」
と、呟きつつ、やはり一口に呑み干して。
「んあ…おいし… はむ…」
みたらし団子をもう一口食べる。
時雨の半分のペースで呑みながら。
「時雨…そんなに呑んで…大丈夫なの?」
時雨がどのくらいお酒に強いのか
知らないので心配そうに尋ね。
「ん…大丈夫だよ…多分」
割と呑み慣れているのか
あまりアルコールが応えているわけでもなく
体が火照ってくる程度で。
「咲也こそ…これ甘いけど
思ってる以上に度数高いからね…」
「え…? う…うん 大丈夫…」
少し赤みのさした頬で微笑んで見せながら
空になった酒坏を時雨に差し出し
2杯目を注いでもらう。
咲也の顔が赤い…
本当に大丈夫なのかなと思ったが
とりあえず2杯目の酒を注いであげて
「まあそれならいいけど…」
と、今度はどら焼きに手をつけて…
「ん… うまぁ…」
「ん… こくん」
お酒の甘みと和菓子の甘みを愉しみながら。
「本当に…時雨は 甘いものが…好き…だね」
美味しそうにどら焼きを食べる
時雨を微笑ましく見つめる。
「うん、大好き… 甘いモノくれたら…
懐いちゃうかもなー」
まるで自分がまだ子供であると言わんばかりに
甘党であると主張して。
「咲也の好みとかあるの?」
そういえばあまり咲也のこと
聞いたことがないなとふと口にしてみて。
「ん…? 僕? 僕も甘いもの…好きだよ?
女将さんの言いつけでこの格好…だけど
シュークリームとかクレープとか…好き…
和菓子も嫌いじゃないけど…」
実は洋菓子が好きな事をこっそり時雨に教える。
「へぇ〜そうなんだ… クレープって
見たことあっても食べたことないから…
分かんないけど…美味しいんだろうな…」
クレープの生クリームやチョコ、バナナやアイスクリーム。
食べたいなと思いを馳せながら、もう一口どら焼きを食べて
お酒で流しこんでいく。
「食べたこと…ない…の?
じゃあ 今度…僕が作ってあげる…ね
お店のみたいに…綺麗には出来ないけど…」
母親が病弱で寝込んでいる時に
自分で料理をしたりおやつを作っていたので
時雨のために作ってあげたいなぁっと
思いながら2杯目をこくりと呑み干す。
「うん、ない。屋台を眺めるくらいしかなかったからね…
ほんとに? うわ… 楽しみ…」
クレープに期待を膨らます時雨。
呑み干した咲也の酒坏にお酒を注いであげて。
「あー、大分熱くなってきた…」
着物をパタパタとさせて。
「うん…今度のお給金もらえたら…
材料…買ってきて 作るね…」
にこっと微笑み3杯目に口を付ける。
着物の襟を崩す時雨の鎖骨や白い胸が目に入り
顔を赤らめ目のやり場に困る。
「やったー、ありがと」
お酒のせいか若干テンションが
高い時雨はきゃっきゃと喜んで
「咲也ー 大分赤くなってるね、酔ってきた?」
「う…ん かな? 顔…熱い…」
酒坏を空にしてレジャーシートの上に置いて
桜の木に寄りかかるように座り。
「はぁ… 桜…綺麗だね…」
「ま、そりゃそうだよね」
桜の木に寄りかかり、上を見つめる咲也。
それにつられて時雨も見上げる。
風に揺られて、花びらが舞っていく光景は
なんとも優雅で儚い。
「そうだね、すぐ散っちゃうけど…」
「ふふ… さっきは笑っちゃったけど
確かに…桜を背景にした
着物姿の…時雨… すごく…綺麗…」
うっとりとお酒で潤んだ瞳で見つめる。
「でしょ? まあ半分冗談だったけどね」
ふふんと勝ち誇ったように笑えば、くいっと酒を煽り一息つく。
「咲也こそ、ちょっと顔がとろけてて
エロい…かも」
「ふぇ…?」
確かにぼーっとしていて
こうして木に寄りかかっていないと
寝転がってしまいそうな身体を支えている。
「…時雨ぇ」
木から身体を起こすとふらつくように時雨に抱きつく。
「ほーら回ってきたでしょ… おっと危ない危ない…」
ふらついてきた咲也を抱きしめるように受け止めて。
「あはは、あんまりお酒に強くないんだな」
よしよしと背中をさすってやる。
「ふにゃ… 時雨 あったか…」
桜の花びらを散らす夜風に
お酒で熱を持った身体が少し冷えていて
時雨のぬくもりを気持ちよさそうに擦り寄る。
「ん… 咲也ひんやりしてて気持ちいい…」
擦り寄る咲也を優しく受け止めれば
火照った体に冷えた咲也の体が心地よく感じられて…
しばらくそのままで…
「ん…」
『このまま寝てしまったら気持ちいいだろうな…』
と、思いながら時雨に包み込むように抱かれたまま
さらさらと散る桜を時雨の肩越しに眺める。
「いつもより甘えんぼになってるね、咲也…」
寄り付いて、まるで猫のようになで声を出す咲也の髪の毛を
人差し指で弄って
「ほんと『風流』だね、ほろ酔い気分で、花見にイチャつき…」
「ん…」
髪を弄られくすぐったそうに時雨の首筋に
顔を埋めふるふると左右に首を振る。
「時雨…お酒強いんだねぇ…」
いつもよりはテンションが高いが
そんなに変わりのない時雨に
『大人だなぁ』なんて思いながら。
どう見たって甘えているのに
首を横にふって否定する咲也。
首筋に淡いくすぐったさと熱い吐息が
かかるのがわかって。
「ん…昔からちょっと呑んでたから…」
「ふぅん… はぁ…」
夜風に冷えていた身体が時雨に擦り寄っていると
だんだんと熱くなってくる。
「時雨…」
擦り寄っていた腕をぎゅっと力を込めて時雨に抱きつく。
色っぽい吐息を吐きながら
ぎゅっと抱きしめる強さを増す咲也。
もじもじと顔をさらに赤くして何か言いたそうにしている。
「ん…どうしたの? 咲也…気分悪い?」
「ううん…平気…」
首筋から顔を上げ時雨の碧眼を間近に見つめて。
「時雨… 好き…だよ」
言い終わると時雨の答えを待たずに唇を奪う。
咲也の顔が接近したと思った瞬間には
唇を奪われる。
アルコールの香りが口内を満たす。
しかし舌の動きは鈍く
むしろ好きにしてくれと言わんばかりで…
「くちゅ… くちゅ… んあ…」
咲也の口内を愛撫していく。
「ん…ちゅく ふ…っ はぁ ちゅ」
アルコールの混じっった時雨の唾液を
媚薬のように感じながら舐めとって。
「なあに、咲也…そんなに甘えてたら…襲っちゃうよ…?」
ネコのように甘えてくる咲也を見ると
どうもこちらが抑えられなくなり…
ゆっくりと押し倒し…
「ちゅく… 僕の唾液… そんなに美味しい?」
「ふ… はぁ うん… 時雨の… 甘い… ちゅ」
押し倒されるまま時雨の下敷きになり
見上げると夜桜を背にした時雨がとても綺麗で…
「はっ…咲也… そんな目を潤ませてさ… 誘ってるの?」
咲也の着物の帯を解いて、細身の体を露わにさせる。
「…ねえ、どうして欲しいの? 言ってごらん?」
「…っ ゃ… 時雨 ここ外…だよ?」
露になった肌に夜風を直に感じてビクンと肩をすくめ。
「し…時雨と…シたい… …けど… こんな所で…」
「咲也がそんなやらしい顔してるから悪い…
いくら僕でも据え膳はちゃんと食べるんだよ?」
白磁の肌をなめらかに触って。
「ほら… やっぱりシたいんだ…」
胸の突起をきゅっとつねる。
「はぁ…んっ ふ… ぁ…っ」
時雨の頭ををぎゅっと抱き寄せ
胸に抱き寄せるようにして
顔を時雨の髪に押し当て声を殺す。
お酒のせいで敏感になっているのか
胸の突起をつねられただけで
全身に電気が流れるかのように快感が走る。
「我慢しちゃだーめ…
もっと咲也の声が聞きたいな…」
胸に押し当てられたところから、舌でチロチロと舐めて
突起を吸い上げてみる…
見れば咲也の屹立はもうトロトロで
「はっ… やらし…」
「んんん…んっ 時雨ぇ…
はぁ… 誰か来ちゃ…う」
建物からはまだ明かりが漏れていて
恥ずかしさにヒクヒクと屹立が震える。
しがみつける場所を失い
自分の手の甲で口を塞ぐ。
「大丈夫だって、ほーら…」
声を噛み殺す手をどかして
両手をひとまとめにして抑えつける。
「ね、咲也の声… あまーいの聞かせてよ…」
残る手で布越しに屹立を扱いてみて。
「ゃ… ぁっあっあっ
しぐ…れぇ ぁぁあ…んっ」
時雨の下で身体をくねらせ
扱く手に身を委ね 甘い声で鳴く。
「いいね… ぞくぞくする…
そんな声で鳴くようになったんだね…」
あの『教育』の時とは比べものにならないくらい
艶やかさを増して…
それなりに数をこなしているのだろうと思って。
「気持ちいい?」
扱く手は激しさを増していく。
好きな相手からの愛撫…
お客様にされるより何倍も気持ちよく
コクコクと頷き嬌声を止めることができない。
「ぁんぁんぁぁ…っ 時雨…ぇ んん…っ」
「はっ… かわいい… 咲也」
扱く手を止めてしばらく乱れる咲也を見つめる。
桜の花びらが咲也に降り注ぐのはなんとも扇情的で。
「これ…どうしたい?」
あえて屹立に刺激を与えずに
指先で先走りをいじるだけで…
「はぁ…はぁ…」
涙で潤んだ瞳で時雨を見上げ。
「時雨と…一緒に…イキたい… きて…時雨…」
おず…と時雨の濡れた手が
孔に触れるように腰を浮かす。
「そか…弄ってあげるから
咲也もいっぱい鳴いてね?」
くちゅりと先走りで濡れた指先で
咲也の孔にゆっくりと挿入していく…
「あつ… 柔らかい… すごい… 咲也…」
「ひゃぁぁ…ぁんっ しぐ…っ ぁあぁぁっぁ…っん」
きゅんきゅんと時雨の指を締め付けながら
抑えつけられた両手をぐっと握りしめ
開いた脚がガクガクと震える。
「なんてエロい声…」
締め付ける孔をさらにほぐすかのように
二本目の指を入れて…
くちゅ…くちゅ…くぷ…っと
孔はほぐすものの
前立腺などいいところは触ってあげない。
自分からもっと淫らな言葉を言わせたかった。
「ひ…ぁああっ んぁっ」
二本に増えた指にビクンと腰を跳ねさせ。
「し…ぐれっ もっと…ぉ 奥…に…っ
はぁっ んんぁ…っ」
「ん? はっきり言わないとわかんないよ?
奥? 奥ってどこかな?」
ビクビクと跳ねる腰に、潤む瞳。
時雨の屹立も興奮から立ち上がっている。
「別にこのまま終わってもいいんだよ?」
「ゃぁ… はぁっ お…奥の
んんっ もっと…気持よ…く…してぇ…っ
あっぁっ・・・あっん…」
自分から腰を振って時雨の指を飲み込んでいく。
「あっん そこぉ…っ ぁんっ 深…ぃっ」
「ん… 良い子だね…」
深く飲み込まれた指を曲げて
グチャグチャとかき混ぜれば
前立腺に触れて、それを撫でるように刺激して。
「そろそろ僕のも気持ちよくしてほしいな… 咲也」
乱れた咲也の髪を梳いてかき分けてやる。
「んぁぁ… んっ しぐ…れぇ…っ」
前立腺への愛撫にイキそうになりながら。
「はぁ… はっ うん…時雨…」
髪を撫でてくれる手に擦り寄るように甘えて。
「見て… 咲也の乱れてるとこ見てたら
興奮しちゃった… お酒のせいかな?」
くすりと笑って咲也の孔にあてがう。
「だめって言っても挿入れちゃうから…
我慢できないし… んんあっ」
屹立を一気に押し込めば
ヌルヌルと腸壁が絶妙に締め付けてきて。
「ふ…ぁぁあっあっ 時雨っ 時雨ぇ んぁ…んっ」
一気に挿入されビクンと背すじをそらし腰を跳ねさせ
抑えられた両手をもどかしそうに身体をくねらせる。
「感じすぎだよ? 咲也…
いっつもお客様にそんな風にされたら大変だね?」
つなぎ止めた手を放し
咲也の腰を持ってゆっくりとスライドさせていく。
ねっとりと締め付けてくる感覚に思わず目眩がする。
「んあは… 咲也…」
解放された両手を時雨の背中に回して抱きついて。
「はぁ…っ こんなに…感じるの 時雨…だけ…
ふ…ぁぁっ 時雨ぇ…っ んぁ…っ」
「はぁっ… 咲也… わがままな身体だね…
そんな好き嫌いしちゃ…だめじゃない…」
パンパンと腰を打ちつける音が
風の音にかき消されていく。
「くっ …気持ちいい… 咲也… くちゅ」
抱きしめられ密着すれば思わず唇を奪い
耳元で『もうイきそう』と囁いて。
「ちゅ… うん…っ 時雨っ」
耳元の甘い囁きにぎゅっと抱きつきを強くし。
「中に…ッ ちょうだい 時雨…っ」
「いくよ… いっぱい注いであげるからっ…」
時雨の動きは最高潮。
泡が立つほどぐちょぐちょと
屹立を突き立てて快楽を貪る。
「んっ …うあっ …イクっ… 咲也っ…」
びゅるびゅるびゅるっと
屹立は脈打ち、白濁が咲也へと流れ込む。
「んゃあぁぁぁあ…っ ィ…くぅ…っ」
身体の中に熱いものを感じながら
自分の屹立も二人の身体に挟まれるような動きに
白濁を吐き出す。
「く… ああっ …ふぅ… あーあ…ぐちょぐちょ…」
密着したまま咲也が射精したために
着物が白濁でベトベトに汚れてしまって…
困ったように咲也を見て。
「ま、いいか… 気持ちよかったよ… 咲也」
「はぁ はぁ はぁ… 時雨…」
快感にトロけた瞳で見上げれば
夜風にサラサラと黒髪を揺らす時雨がとても綺麗で。
「…はぁ 『風流』だった…?…」
ゆっくりと繋がった屹立を引き抜いて…
咲也を見つめる。
やっぱり僕のこと好きなんだなと再確認して…
桜の花びらが舞う中で、咲也の姿が儚くも美しく……
「これ以上の風流は…なかなか見つからないかもね」
くしゃくしゃと咲也の髪を撫でて。
「ん…」
ぎゅっと抱きついて
お酒を呑んで『運動』したせいか
酔いが回っているなぁと自覚しながら
いつもよりも大胆な自分に驚きつつ。
「時雨… 愛してる…」
「ん… ありがと… 咲也… 受け取っておくよ…」
『愛してる』…かぁ… まんざらでもないかも…
「そろそろ咲也も風邪…引いちゃうから
さっさと片付けてシャワーに行こうか」
ポンと咲也の頭に触れて立ち上がる。
こういう日もいいかと顔をほころばせながら。
「うん…」
今はまだ受け取ってくれるだけでいいと微笑み
時雨の着物の乱れを直して
自分も帯を締め直し花見の席を片付けて
春の宴の余韻を残しながら帰途に着く。