第十三話

「初めての二人きり」





別荘から少し歩くと
すぐに海岸に辿り着いた。
やはりまだ泳ぐには早いらしく
やや冷ための潮風が顔を撫でる。
それでも穏やかに寄せては返す波の音は
時雨にとっては新鮮そのもの。
浜辺の砂や貝殻さえも
外の世界を知らなかった時雨の興味を惹く。
「海って初めてだけど… こんなに広いんだね」
傾きかけた陽が海を赤く染め始めていて。

道路より少し低くなっている砂浜に階段を降りれば
ザクっと砂独特の感触。
干潮時なのか波打ち際から5メートル程
誰の足跡のない綺麗な砂浜が続いていて。
「うん… 足先だけでも入れるかなぁ…?」
満ちては引く波にクロックスを脱いで
片手で持って時雨と手を繋いだまま近寄って…
「わ… やっぱ冷たい…」
足の裏を砂が流れて足が砂に埋もれていくのを
楽しむように見下ろして。

「うわぁ… 砂サラサラだね」
足に感じる砂の感触は独特の心地よさで
パシャパシャとその場で足踏みをして感触を楽しむ。
「咲也、見て見て、これ綺麗な貝殻」
ふと足元の貝殻を拾い上げて咲也に見せる。
真っ白な貝殻には一本黒いストライプが入っている。
もの珍しそうに貝殻を眺める時雨。

次の波で足を洗うようにして砂を落として
クロックスを履き直し。
波打ち際を海に近寄っては
波から逃げるように走ったりと波と戯れる。
時雨が綺麗な貝殻を拾ったのを覗きこんで。
「何の貝だろう…? 内側が虹色で綺麗だねぇ」
満潮時の波打ち際の跡にたくさんの貝殻を見つけて
時雨に負けじと貝殻探しを始める咲也。

咲也も貝殻を探し始めて
浜辺をそこかしこに掘り返す二人。
貝殻を見つけては見せ合い
砂を固めて遊んでみたりしてみる。
やがて陽は更に傾き、空や海を橙色に染めていく。
時雨は浜辺に座って沈みゆく太陽を見て。
「綺麗だなぁ…こんな景色があるなんて知らなかった」
微笑みながらポツリと呟いて。

時雨と一緒に綺麗な貝殻を集めては
ポケットにしまっていく。
すっかり夕暮色に染まった空と海との
水平線に落ちていくオレンジの太陽を
時雨と並んで砂浜に座って眺める。
「沈み始めると… あっという間に…
 太陽が小さくなっちゃうんだよ…」
ゆっくりと水平線に差し掛かる太陽を見つめて。

ゆっくり、ゆっくり沈んでいく夕日を二人で見つめながら
時間が流れていく。
空は徐々に暗くなり月がはっきりと見えてくる。
「こういう風に… ゆっくり過ごすのもなかなかないからね。
 とくにこの時間はね…」
夜にさしかかると遊廓は忙しくなる。
時雨は夕日を眺めるなど、ほとんどしたことがない。
もう半分以上、陽は沈んでしまっていて。

「そうだね… 遊郭だと山の中だから…
 夕焼けの空は見えるけど…
 こういうふうに最後まで夕日は見えないものね…」
東の空からの夜の紺色と
沈みゆく太陽の周りのオレンジ色まで
綺麗な空のグラデーションを眺めながら。
半分を切った太陽は見る見るうちに
水平線に吸い込まれるように最後にキラっと
一点の輝きを見せて沈んでしまう。
それでも残る夕焼け空を美しい物を鑑賞するように
二人で見つめ続ける。

空は夕焼けの余韻を残していたが
やがて紫色の夜の空に移り変わっていく。
「咲也…そろそろ冷えるから帰ろうか、お腹も空いたし」
ゆっくりと腰をあげて、ズボンについた砂をパンパンと払う。
街灯が少ない浜辺はもう薄暗くなり始めている。

「ん… そうだね… 何か食べたいものある?」
にこっと時雨に微笑みかけ。
「冷蔵庫に食材いっぱいだったから… 頑張って作るね」
立ち上がって同じようにズボンと手についた砂を払い落とし。
また時雨と手を繋いで別荘へと戻る道を歩いて行く。

「んー、別になんでもいいよ?
 泊まらせてもらってる身だから
 あれこれ注文つける気はないから」
にこっと笑う時雨。
「料理上手の咲也にまかせるよ」
そういって足早に別荘へと帰っていく。

「くす…遠慮しないでって言ったでしょ…?
 んー じゃあ 煮込みハンバーグでいい?」
お腹が空いているという時雨に
早めにできるメニューを勧めながら別荘に着くと玄関横の水道で
足やクロックスに付いた砂を
二人交代に洗い流して別荘の中に入る。

「遠慮しなくてもいいって言われてもね…
 図々し過ぎるのもどうかと思うよね?」
クスクスと笑いながら、別荘に上がり、リビングのソファーに座る。
少しはしゃぎすぎたか、軽く一息ついて。

「早めにできるって言っても30分くらいはかかるから…
 テレビでも観てて?」
遊郭の部屋にはテレビがないので
それも久し振りだろうと
ソファに座る時雨にテレビのリモコンを渡してからキッチンに入る。
お米を研いで炊いている間に
フードプロセッサーでタマネギとニンジンをみじん切りにして
フライパンでじっくり炒めて。
ひき肉に混ぜてよくこねてからハンバーグの形に整え焼いていく。
肉の焼ける香ばしい匂いがリビングまで満たしながら
両面を焦げ目がつくまで焼いて
ケチャップと中濃ソースと砂糖と水をフライパンに入れて
ソースを作り蓋をして煮込んでいく。
冷凍のフライドポテトを油で揚げれば、ちょうどご飯が炊きあがる。
大きめのお皿にハンバーグとフライドポテトとご飯を盛り付け
肉汁の絡まったソースをたっぷりかけて
『お子様ランチ』風にしてダイニングのテーブルに持ってくる。
「お待たせ… 食べよっか?」
ソファで待っている時雨に声をかける。

テレビのチャンネルを適当に回してみる
ニュースやバラエティー、アニメが放映されていて
ぼんやりと眺めていたが
その内テレビの電源を消してのんびりと待って。
ハンバーグのイイ香りが漂ってくる頃に、咲也の声がかかる。
ダイニングのテーブルに夕飯が並べられ
時雨もそちらに向かう。
「おお…やっぱり咲也って料理上手なんだね」

「えへへ… ありがとう…」
時雨に褒められて照れくさそうにしながら
テーブルに時雨と向い合って座って。
「いただきます…」
と、一口ハンバーグを食べて
「時雨向けに甘めに作ってみたんだけど… 美味しい…?」
時雨の感想を待ちながら
ハンバーグを煮込んでいた間に作った
レタスとキュウリとプチトマトのサラダも取り分けて。
「はい…野菜も食べてね」
と、マヨネーズやサウザン、ゴマなどのドレッシングを並べ。

「いただきまーす」
手を合わせて、軽く一礼。
そして真っ先にハンバーグを一口。
「んむ…おいしい」
口の中に広がるジューシーな味わいに舌鼓して。
「野菜もねー」
と、ドレッシングもかけずにもしゃもしゃと野菜を頬ばっていく。
「んー、野菜も甘い」

美味しそうに食べてくれる時雨を嬉しそうに見つめて。
「良かった…」
と、一言呟いて自分も食べ進めていく。
「…時雨 甘いのが好きってのはいっぱい聞いたけど…
 嫌いな食べ物とかある?
 それは作らないようにするから…」
この後、数日間時雨と一緒に過ごすにあたって
好き嫌いの確認を取る咲也。

もぐもぐと口の中にハンバーグやらライスやら
野菜を詰め込んで平らげていく。
「嫌いなもの? んー」
咲也の質問に少しばかり考えて。
「無いよ? 出されたものは有り難く食べるよ?
 食べ物ならね」
と、ハンバーグをまた口に放り込んで。
「強いて言うなら… 苦いのとか酸っぱいの?
 あ、それって腐ってるのか…
 辛すぎるのもお腹下すしなあ…」
と、ぶつぶつと呟いて。

「そか… 僕も苦いのはダメだなー…
 ゴーヤーチャンプルーとか食べられないし…
 酸っぱいのは…手羽先の甘酢煮とか
 キュウリとわかめの酢の物は好きだけど…
 辛すぎ…は やっぱり僕もダメ カレーは中辛かなー…」
目の前のハンバーグを食べながら、お互いの好みを話し合い。
「よく嫌いって言われるピーマンとかは? 苦いでしょ?」

「へー、咲也は苦いの駄目なんだ…
 じゃあコーヒーも飲めないんだね」
ふーんと頷きながら、お皿のハンバーグや野菜をさらけていく。
「ゴーヤは食べたことないからわからないし…
 …え… ピーマンって…苦いの?
 特に感じたことないんだけど…」
と、一言驚いたように。

「あれ? そう? 僕はちょっとピーマン嫌い…」
ピーマンだらけの青椒肉絲を思い浮かべて苦笑いしながら。
「コーヒーもブラックは飲まないなぁ
 ミルク入れれば飲めるけど…」

「好き嫌いいけないんだー」
と、咲也を指差して笑う時雨。
「コーヒーは角砂糖ボタボタ入れて
ミルクも混ぜて飲むよ僕は」
とにししと笑いながら
そのうち夕飯はきれいに無くなっていて。
「ごちそうさまでした…」
手を合わせて、一礼する

「う〜… 時雨だってやっぱり甘いコーヒーじゃないか…」
と、クスクス笑い。
「はい、お粗末さまでした」
と、先に食べ終わった時雨に言って。
自分も残りのライスとフライドポテトを食べ終えて。
「ごちそうさまでした」
と、言えば時雨と自分の空いたお皿を
片付けてキッチンに運ぶ。
「時雨… まだお腹に余裕ある?
 食後のデザート食べる?」
食器を洗いながら時雨に尋ねる。

「デザート? 食べるにきまってるじゃない…
 別腹だよそんなの」
『デザート』という単語に反応して
咲也の方へとグルンと顔をやる。
「どこ? どこにあるの? 咲也の分も食べてあげるから」
と、冷蔵庫に駆け寄って、探し始める。

時雨の反応に
「そっか… 別腹ね」
クスクス微笑み。
「僕の家の近くのケーキ屋さんのなんだけど…
 三田さんが買っておいてくれたみたい…
 冷蔵庫の中の白い箱だよ」
ケーキを出すのは時雨に任せて
紅茶を淹れようとお湯を沸かし
食器棚からティーカップと
ダージリンの紅茶葉を取り出して。

「そっか、わかった」
と、冷蔵庫の中の箱を取り出して
ダイニングのテーブルに置く。
時雨はまだ箱を開けないで
咲也が紅茶を淹れるのを待って。
「咲也〜、はやく〜」
と、咲也を急かす。

ティーポットから熱い紅茶を注ぎ
時雨が何個でも使えるように
角砂糖の入ったティーカップとお揃いの容器と
ケーキの取り皿とフォークを
トレイに乗せてダイニングに持って行く。
「箱 開けていいよ?」
と、促し箱を開けると、イチゴの乗ったショートケーキ
さくらんぼのチョコケーキ、ガトーショコラ
トロけた果肉のアップルパイ
イチゴたっぷりのナポレオンケーキ
紅いイチゴゼリーと2段になった真白なレアチーズケーキ
洋なしのシャルロット、抹茶のシフォンケーキ
レモンクリームパイ、バナナのマフィン
桃のタルト、カスタードクリームの挟まったエクレア
粉砂糖のふりかかった生クリームとイチゴが覗くシュークリーム…
色とりどりのケーキがぎっしり入っていて。

咲也は簡単に
『近所のケーキ屋さん』
と、説明したが、本当は腕の良いパティシエの居る
有名な行列のできるカフェの物で。
どのケーキも時雨の目には
美味しそうにキラキラと映っていて。
宝箱を覗くように箱の中を見つめる時雨に、
「…どれにする?」
これはまた悩むんだろうなぁと思いながら尋ねる。

様々な種類のケーキや洋菓子に目移りさせながら…
「どれって…全部」
と、咲也の質問に真顔で答える時雨。
「え… やっぱりだめ? 咲也の分がなくなっちゃうもんね」
と、舌をだして照れ笑い。
そしてシュークリームを手に取ってお皿の上に乗せる。

「くす… じゃあ 半分こずつ食べようか?」
今度は時雨と隣りに座って。
ガトーショコラをお皿に取って、
「はい、あーん…」
ガトーショコラをフォークに乗せて時雨の口に向ける。

「うん、そうしよう。 大賛成」
と、首を縦に振って、咲也が隣に座れば
フォークにケーキを刺して口元に持ってくる。
時雨は口を開けてパクリとケーキを食べる。
「なんだかなあ…カップルみたいだよ咲也」

ケーキを食べた時雨が突然言い出した言葉に赤面し、
「う…うん…」
と、顔を背け自分のガトーショコラを口に運ぶ。

「こうやって二人きりで食事するのも久しぶりだしね…
 手料理振る舞ってくれる咲也は、僕の彼女?」
クスクスと赤面する咲也の顔を見て笑う時雨。
シュークリームを頬張れば
あふれた生クリームが鼻先にくっついて。

思い出せば今日は一日
旦那に見送ってもらった遊郭の地元の駅から
電車の中、乗り換えの駅、海岸で遊んでいた時も
ずっと時雨と手を繋いでいて…
『まるでデートのようだったなぁ』と思うと急に恥ずかしくなって。
さらに時雨に『僕の彼女』なんて言われてしまえば
耳まで赤くなって俯くばかりで…
それでもチラと時雨を見れば
鼻先に生クリームが付いていて…
クスっと笑ってしまう。
「じゃあ… こんなとこに生クリーム付けてる時雨は
 『手のかかる彼氏』…かな」
顔を近づけペロっと鼻先を舐めて。

軽口を叩いていると、ますます顔を赤く染める咲也を
ニヤニヤと眺めていると
不意にクリームのついた鼻を舐められてびくんと跳ねる。
鼻をちょんと触り今度はこちらが恥ずかしそうにする。
「ふんだ… どうせエッチにしか興味のない彼氏ですよーだ」
と、ぷいと向こうを向いてしまう。

「え… そんなこと… 言ってない…よ…?」
なんでここで急にエッチと言い出すのか
不思議そうに時雨を見て…
「…シたい…の…?」
あの夢の日以来、お客も取らずに
女将からの稽古に励んでいた咲也には
今 時雨の鼻先を舐めた行為すら久し振りで。

「むぅ…シたいというかなんていうか…」
咲也の言葉になかなか返す言葉が見つからなくて
そういえば咲也とはしばらく体を重ねていなくて
ヤリたいといえば否定はできなかった。
「まあ…昨日助けて…くれたから…シてもいいよ…?」
と、途切れ途切れに話して。

「…身体… 痛くない…?」
一応『怪我人』の時雨を心配しながらも
ケーキ皿とフォークをテーブルに置いて
時雨の方を向くとスルっと首に腕を回し抱きつく。

「まあ…あんまり激しくなければ…ね」
と少し恥ずかしそうに目をそらして。
「咲也は嫌でも激しくなるから…
 そこらへんは覚悟してるけど…」
と、咲也の細身をさすり。

「…ごめん… エッチしてる時の時雨…
 すごく色っぽいから…
 我慢…できなくなっちゃうんだもん…」
激しくなると言われて言い訳しながら。

「もう… 仕方ないなあ…
 一応『怪我人』だけど… 好きにしていいよ。
 いつも好きにされてるような気がしないでもないけどね」
小言を挟みつつコツンとおでこを当てる。

「…時雨… ちゅ」
腕の中の時雨に口付け。
「ん… 生クリームのせいか 甘い… ちゅく」

ゆったりと軽く口付けする咲也に時雨も応えて舌を絡める。
「ん…ちゅ…くちゅ…チョコの味がするね…咲也…」
咲也の口の中を舐めまわすように舌を動かしていく。

「ん…ぅ ちゅ… 時雨…」
お互いの口の中のケーキの味を味わうように舐め合い。
時雨の胸を押して一旦離れる。
「…ケーキ 冷蔵庫に戻してくるから… 寝室…行こう?」

咲也の口の中をねっとりと味わっていると、咲也が距離を置く。
「いいよ、寝室でいっぱいしようね」
と、サラサラの髪を撫でてやる。

「ん…」
髪を撫でてくれる時雨に微笑んでから
食べかけのケーキも箱に戻して冷蔵庫に入れて
ダイビングとリビングの電気を消して
寝室へと手を繋いで階段を上がっていく。
遊郭のように近くの部屋に誰が居る状況ではなく
初めての二人きりに安心したように
寝室に着くなり時雨とベッドに倒れ込み
甘い吐息を零しながらキスを貪る。
「はぁ… しぐ… んぅ…っ くちゅっ」

寝室に着くや否や、咲也は先ほどとは違い
貪るようなキスをする。
時雨もそれに応え、深く咲也の舌を迎え入れる。
「なんか… ちゅ… すごく積極的だなあ…
 そんなに溜まってた? ちゅる…」
唾液が口角から漏れて線をつくり、鎖骨へと流れていく。

咲也は唇を合わせたまま頷き。
「…あの日… 時雨と喧嘩…してから…
 誰とも…シてないから… ちゅぅ くちゅ…ん」
時雨の身体に負担にならないように
下敷きにするのではなく
お互いがベッドに横になるように寝て熱いキスを続ける。

『そっか…』と軽く頷きながら…
深く口付けを交わしたまましばらくそのままで
口を離せば、銀糸が二人の口を繋いでいて。
「それなら…咲也ぁ……いっぱいちょうだい…」
と発情したかのようにねだり。

「ふ… ぅん… 時雨… ちゅぅ 時雨…」
ゆっくりと時雨の頬から耳に口付けを移しながら
時雨のシャツのボタンを外して
なめらかな肌を優しく無でるが包帯や絆創膏に触れ、
「…痛い?」
耳の中に舌を差し込み濡れた耳穴に問いかける。

「んやあ…っ …だ…大丈夫… 心配しないで… んはあっ」
ぞくぞくと咲也の口付けに淡く快感を感じつつ
甘い吐息とともに答える時雨。
こちらも咲也の首筋を舐めていく。

「ふぁ… しぐ…れぇ… ぁん… ちゅくっ」
久し振りの愛撫に咲也も敏感に反応し首をすくめる。
胸に巻いた包帯をゆるめ、両胸からガーゼを取り除けば
かさぶたの出来た痛々しい突起を優しく摘む。

「…いっ…つ…咲也ぁ…そこぉ…」
まだ治っていない乳首がチクリと痛み
時雨は体をかがめてしまう。
「気持ちいいけど…ちょっと痛い…」
と、ぎゅうと咲也に抱きついていく。

「ん… ごめんね…」
広いベッドの上、上半身を起こしてカットソーを脱いで
自分の胸の突起を時雨の目の前に向け
自分も時雨の乳首を優しく口に含んで舐め上げていく。
「ちゅ… ぺろ…」

「ん… ちゅく… んああ… ちゅう… ちゅう…」
時雨は咲也の突起を乳飲み子のように吸い上げて
コリコリと摘んでやる。
自らの突起も咲也の愛撫によってピンと立ち上がり
なまめかしい色に染めあがっていく。
下半身の屹立もゆっくりと頭をもたげ始めて。

「あぅ… んっ 時雨ぇ… 気持ち…い…っ
 んんっ ちゅぅ… ちゅっ」
久し振りの時雨との行為に全身を震わせ
頭の中は多幸感で満たされる。
激しくならないように気をつけながら
優しく時雨を愛撫し続ける。

「あうう…咲也ぁ…もっと…気持ちいいよ…」
咲也の乳首を吸い上げ弄りつつも
細いウエストラインや、臍をいじり
布越しに咲也の屹立にも手を出し始める。.
ゆっくりと撫でるように咲也の屹立に触れれば
あっという間に頭をもたげ。

「はぁ…っ ゃ…んっ 時雨… んんっ」
ゆっくりと腹筋やおへそを舐めながら身体をずらしていき
時雨のズボンに手をかけ脱がしていく。
傷だらけの屹立を口には咥えず
根元から優しく舌で舐め上げていく。

ねっとりと舐めあげる感覚に時雨の腰がびくんと跳ねる。
ゆっくりと丁寧にいたわるような愛撫は
時雨の高ぶりをじわじわと刺激して。
こちらは咲也の屹立を一気に咥え込んで、激しく愛撫する。
「ん…っ ちゅぼっ ちゅぼ… んううっ」

「はぁんッ あぁ…っ しぐ…れぇ…
 んんッ ちゅぅ… ペロ…」
久し振りの行為だというのに
激しく愛撫されれば
時雨の口の中ですぐに大きさを増してしまい。
同じような刺激を時雨に与えそうになるのを耐えて
優しく亀頭を舐め先走りを舌で舐めとる。

優しい咲也の愛撫は時雨の多幸感を満たすには充分だ。
しかし欲望を満たすには少なすぎて…
「咲也ぁ もっと… もっと気持ちよく…
 弄って… 痛くても…いいからぁ…」
腰をくねらせて足りないと言わんばかりにねだり
咲也の屹立を咥え込む

「もう… 痛くても…知らないから…ね…
 カプッ くちゅくちゅくちゅ…」
時雨のかわいいおねだりを聞き入れて
屹立を咥え吸い上げながら唇で扱き…
溢れる先走りを指に垂らして
くねらせる腰を抱いて孔をいじる。

「っ……つうう…咲也…ひああっ…んおっ…はあっ」
屹立に与えられる快楽と、傷口にしみるような痛みに
思わずかすれるような悲鳴が上がるが
快楽の方が勝っているのか、腰を振り始める。
孔のしみるような痛みに涙が零れる。

やっぱり痛むのだろう
聞いたことのないような声を上げる時雨に
心配しながらも、腰を振ってくる時雨に
快感を与えるように舌を絡め迎え入れ
孔を弄る音と、お互いの屹立を舐めあう水音が寝室に響く。
「んぁぁ…ッ ちゅくっ 時雨…っ あぁ…ぁぁっぁっ…あぁッ」
いつも遊郭では声を抑えがちの咲也だが
二人きりであることに安心してか甘い声を零しまくる。

「咲也っ… …いっちゃう… …ひうううっ」
痛みと快楽で敏感になっている屹立は
もう限界まで張り詰めていて
孔も前立腺も抉られれば、耐えられるはずもなく
咲也の口の中で、ドロリとゼリーのような白濁を吐き出す。

「ん… ぅんっ …んんんッ …ゴクン」
時雨の白濁を受け止め飲み込むと
ゆっくり屹立を舐めて綺麗にしてあげながら
孔を弄る指を増やして。
時雨の口から自分の屹立を抜き取る。

今日初めての絶頂にくたりと体をベッドに預けて
なおも孔を拡げいじる快感にひくひくと腸壁を収縮させて。
時雨ももう我慢の限界で。
「さく…やぁ… いっぱい突いて…
 気持ちよく…して… 天国に連れてってぇ」
ふやけきった顔で咲也におねだりして。

「うん…」
時雨と向き合うように
69の態勢で横たわっていた身体を起こし
時雨の負担にならないよう
横向きに寝た時雨の身体を壁の方に向けさせ
横たわった態勢のままグッと屹立を押し当てる。
「…いくよ?」
ほぐした孔にゆっくりと沈めれば
時雨の腰に両腕を回し抱き寄せるように密着させ
ゆっくりと腰を前後に振っていく。
「はぁ… はッ 時雨… 時雨…っ」

「っ……いっ…うああああっ…ぎ……ひい…」
咲也はゆっくりと孔に屹立を埋めていく
それでも痛みは強くなんとか耐えて
息も絶え絶えに咲也を受け入れる。
熱くてじんわりとお腹を満たす質量が動き出すと
それに合わせて普段よりも大きめの声でよがる。

「く…ぅッ きつ… はぁっ 痛い…? 時雨… はぁッ」
ゆっくり動きながら、いつもより大きい声と
喘ぎ声というより悲鳴に似た声に
時雨の耳の裏に近づけた唇で囁くように尋ねて。

痛くて、苦しくて、与えられるものは
普段時雨が好むものとは全くの別物だ。
しかし、しっかりとその中にも
快楽を、それ以上に咲也の労りを感じとっていて。
「だい…じょうぶ… いっ…
 だから… もっとちょうだい?」
相手はあの不良ではない。
全てを受け止めてくれる咲也なら
痛みを苦しさを快感を全てを全て与えてくれるだろうと。

「ん… はぁッ しぐ…れ… はッう… あぁッ あっ」
時雨の耳の裏やうなじにキスを落としながら
時雨の奥を突いていく。
腰に回した手で時雨の屹立を扱き全身を愛撫していく。

「あああっ …さく…やっ …んあああっ… あんっ…」
全身が咲也に包まれいる感覚。
不思議と悪い感じはしなくて
快楽の中に心地よささえ生まれるようで。
「さくやぁっ… 気持ちいい… 気持ちいいよぉ…」
無意識のうちに気持ちいいと叫び、堕ちていく。

「ふ…ぁッ 時雨… 時雨の中…も…
 すごい… んぁッ 気持ちいい…よ
 くぅ…ッ んぁぁ…ッ」
時雨と快感を分かち合いながら
やはり二人きりだからだろうか
攻めているのに快感の声を零し
時雨の肩に頭を乗せ耳元で、
「時雨…っ んぁぁッ 愛してる…よ…
 ふ…ぅ…ッ イキそ… ぁぁぁあ…ッ」
時雨と一緒にイキたくて我慢するが限界は近く。

「僕も… もう… イっちゃう… イっちゃうからぁ…」
涙をひと粒こぼしながら、与えられる刺激を享受する。
ほどなくして時雨の屹立が膨れ、絶頂へと向かう。
「んはああああっ、いぐぅうううううっ」
嬌声とともに二度目の白濁をベッドに吐き出してしまう。

「んぁっあぁあっ 時雨ッ ぁぁっ あーーーーッ」
時雨の嬌声とともに時雨の中に熱いモノを注ぎ込んで。
一気に襲ってくる心地いい疲労感に全身の力が抜けて。
それでもぎゅと背中から時雨を抱きしめたまま。
「はぁ はぁ はぁ…
 …次のお客様が居るわけじゃないし…
 今夜はこのまま寝ちゃおう…?
 シャワーは… 朝でいいよね…?」
クテっと時雨の背中に摺り寄りながら。

「咲也ぁ……熱いよぁ…」
注ぎこまれた白濁が腸内を焼き尽くし
ただれてしまうような錯覚に陥る。
そのまま力つきてベッドに突っ伏して
咲也にすり寄るように近づく。
「んああ… 咲也… なんだか…
 このまま寝たら気持ちいいだろうね…」
と、咲也に軽くキスを施し
「おやすみ」と一言かける。

「ん… おやすみなさい 時雨… ちゅ」
時雨にキスを返して、腕枕するように抱きなおして
素肌に心地よい綿の布団を足元から引っ張り二人で包まれると
電車での移動や、海ではしゃいだ一日の疲れが押し寄せるように
すぐに眠りへと落ちていく…






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